英艦艇HMSスペイ、台湾海峡を通過 中国が「挑発」と強く反発

イギリス海軍の哨戒艦「HMSスペイ」が台湾海峡を通過したことに対し、中国軍は6月20日、「意図的な挑発行為」「地域の平和と安定を損なう」と激しく非難した。一方、イギリス側は、今回の航行は国際法に基づき、長期計画の一環として実施されたものだと説明している。英軍艦艇による台湾海峡通過は2021年以来、4年ぶりとなる。

台湾海峡を通過したイギリス海軍哨戒艦HMSスペイ台湾海峡を通過したイギリス海軍哨戒艦HMSスペイ

中国側の猛反発とイギリスの説明

中国国防部は、イギリスがHMSスペイの航行を公に「誇大に宣伝」していると批判し、これは「法的原則を歪め、市民を誤解させる試み」だと述べた。「このような行動は、台湾海峡の情勢を混乱させ、平和と安定を損なう、意図的な挑発だ」と強調した。さらに、中国軍はHMSスペイの航行を完全に監視しており、「あらゆる脅威と挑発に断固として対処する」と警告した。対照的に、台湾外交部は英哨戒艦の通過を歓迎し、台湾海峡における「航行の自由」を守る行動だと称賛した。

台湾海峡通過の背景と英国空母打撃群の展開

イギリス海軍艦艇の台湾海峡通過は、米海軍による定期的な「航行の自由作戦」に比べると稀であり、前回は2021年に「HMSリッチモンド」が通過した際、中国から強い反発を受けた。今回のHMSスペイの航行は、英航空母艦「HMSプリンス・オブ・ウェールズ」を中心とする空母打撃群が8カ月間の任務でインド太平洋地域に到着した時期と重なる。HMSスペイは、この地域に常駐する2隻の英海軍艦艇のうちの一隻だ。キア・スターマー英首相は、今回の展開を「今世紀最大規模の派遣の一つ」と述べ、「敵対勢力には力強いメッセージを、同盟国には団結と決意のメッセージを送るものだ」とその意義を強調した。約4000人が参加するこの打撃群は、30カ国と連携し、複数の国との演習も予定している。

高まる中台間の緊張と中国軍の活動

台湾では昨年5月、対中強硬派の頼清徳氏が総統に就任して以降、中国との緊張が一層高まっている。頼総統は中国を「外国の敵対勢力」と位置づけ、影響力排除の政策を進める一方、中国側は台湾海峡で頻繁に軍事演習を実施。4月には、台湾の主要港湾やエネルギー施設への攻撃を想定した実弾演習を行ったと主張した。中国軍の活動は日本近海にも及んでおり、最近では、空母「山東」と「遼寧」が太平洋上で同時に演習を行う異例の動きも見られた。これら空母からは数百回の戦闘機発着が確認され、一部の機体が海上自衛隊の哨戒機に接近。日本政府は中国側に対し「深刻な懸念」を表明し、6月17日夜には防衛省が中国海軍艦艇の動向を異例の公表を行った。

英海軍艦艇の台湾海峡通過と中国の強い反発は、インド太平洋地域における地政学的な緊張が続いていることを示している。英国の軍事プレゼンス強化は、「航行の自由」を巡る国際的な姿勢を反映し、中台間の緊張や日本近海での中国軍活動とも関連しており、今後の地域情勢に影響を与えるだろう。

(出典: BBCニュース)