特別支援学級の「名札の色分け」問題、保護者の懸念と学校側の意図

発達障がいや情緒障がいなどを持つ子どもたちの自立を目指し、一人一人の状況に応じた指導を行う特別支援学級(以下、支援級)。しかし、近年、小・中学校に設置された一部の支援級における取り組みが、保護者の間で議論を呼んでいる。特に、通常学級とは異なる色の名札を子どもに付けさせる慣行について、懸念の声が上がっているのだ。

保護者からの懸念の声

今年5月、埼玉県内の小学校に支援級で入学した子どもを持つ複数の保護者から、名札の色分けに関する複雑な心境が寄せられた。ある保護者は、「なぜ自分だけみんなと違う色なのか」と毎日子どもに尋ねられることに心を痛めていた。学校側は「クラスごとに色を分けている」と説明するが、支援級の入学者が少ない年度には、その色の名札をつけている児童が校内で一人だけになる状況も生じうる。保護者は、「悪目立ちして、いじめに発展しないか心配だ」と語る。取材を進めると、埼玉県某市では、新1年生に対してクラスごとに名札の色を変える学校がほとんどであることが判明した。例えば、1年1組は赤、2組は黄色、支援級の新1年生はピンクといった具合だ。2年生からは全員が同じ色の名札になるという。

実際にこの小学校の支援級に通うYさんは、自身の子どもはさほど気にしていないとしつつも、他の保護者からは「差別を助長する行為だ」と不満の声が出ていると話す。数年前から続く慣行で、導入時に保護者に確認したとされるが、「嫌です」とは言い出しにくい雰囲気があるという。子どもの特性を個性として受け入れている親だけでなく、支援級への入級に複雑な感情を抱えている保護者もいるため、色分けはそうした気持ちを踏みにじる行為と感じる人もおり、「必ずしもしなければならないのか」という疑問があることを強調した。

学校(教頭)の説明

実際に名札の色分けを実施している小学校の教頭M氏は、その意図を説明した。各クラスにカラーを設定し、児童はそのクラスカラーと同じ色の名札を装着することで、入学して間もない児童が自分のクラスを認識しやすくなり、スムーズな学校生活につながるという。しかし同時に、新1年生の通常学級が1クラスしかない場合など、支援級に入学した数名が「自分だけ色が違う」と感じる可能性については認めた。

埼玉県内の小学校で特別支援学級の児童が着用する、通常学級とは異なる色の名札埼玉県内の小学校で特別支援学級の児童が着用する、通常学級とは異なる色の名札

教育委員会の見解

こうした状況について、同市の教育委員会に問い合わせたところ、名札の色分けは市の共通ルールではなく、各小学校の判断に任されている現状を説明した。また、支援級の名札の色を変えている小学校からは、「支援級在籍の児童であることがひと目で分かり、支援の状況や対応などの情報共有がしやすい利点がある」との報告を受けていると述べた。

広がる色分けの例

埼玉県に限らず、関東地方には名札のほかにも、上履きや遠征時に装着するバンダナ、さらには保護者が学校行事に参加する際のネームプレートの色が、支援級かどうかで分けられている学校も存在するという。

まとめ

特別支援学級における名札の色分けは、学校側が新入生の適応や支援体制の効率化を意図して導入しているものの、一部の保護者からは子どもが特別扱いされている、あるいは差別されていると感じさせるのではないかという強い懸念の声が上がっている。教育委員会は学校ごとの判断に委ねているが、子どもの感情や保護者の心情に配慮しつつ、どのような方法が全ての子どもにとってより良い学校環境につながるのか、今後の議論が求められる。