22日、米国はイラン国内にある3つの核関連施設への攻撃を実行しました。この攻撃は、トランプ大統領が19日の時点で米国の直接介入について「2週間以内に決める」と述べていた中での出来事です。国際情勢ウォッチャーの武隈喜一氏に、今回の米国によるイラン本土への「初」攻撃がなぜこのタイミングで行われたのか、今後のイスラエル・イラン情勢、そして日本への影響について聞きました。
武隈氏は、今回の米国の攻撃について「正直非常に驚いた」と述べました。その理由として、攻撃前にはイランがEUとも外相レベルで交渉を行っており、米国がイランを攻撃する差し迫った必要性が認められなかったと感じていた点を挙げ、多くのアナリストにとっても予想外の展開だったと説明しました。
今回の攻撃の意図については、トランプ大統領が掲げる「核の脅威を取り除く」ことに尽きるだろうとの見方を示しました。しかし、3月時点では「イランはまだ核兵器を製造していない」としていた米国情報当局の見解が、今月20日になって急に「イランは数週間から数カ月のうちに核兵器を製造できる」とイスラエルと同様の見解に変化したことに注目。この情報評価の変化が、その翌日に行われた今回の攻撃を急遽決定させた要因だと分析しています。
イランの核施設と攻撃の詳細
米国が攻撃対象としたイランの3つの核施設は、核兵器製造に必要なウラン濃縮に不可欠な役割を担っています。ナタンズにはイラン最大のウラン濃縮工場があり、フォルドゥは岩盤山岳地帯の地下80～90メートルに濃縮工場が建設されています。また、イスファハンは、ウラン濃縮に用いる遠心分離機を製造する工場がある場所です。
イランの核関連施設の一つ、イスファハンの遠心分離機製造工場
今回の攻撃では、特に地下深くに位置するフォルドゥに対し、米ミズーリ州の空軍基地から37時間無着陸飛行したB2爆撃機6機が12発のバンカーバスターを投下したと報じられています。残りのナタンズとイスファハンに対しては、潜水艦から30発の巡航ミサイルが使用されたとされています。
このフォルドゥの地下施設は、イスラエルが単独で破壊することが困難な場所であり、米国に支援を要請していました。武隈氏は、この要請に米国が応じるかどうかが最大の焦点であり、応じたことは米国がイラン国内への直接攻撃に踏み切り、米国とイランの直接的な戦争のリスクを冒す選択をしたことを意味すると解説しました。
米国がイラン本土へ直接攻撃を行ったことの歴史的意義について、武隈氏は米国とイランには20世紀から複雑な歴史があり、特に1979年のイラン革命以降は国交を断絶し、敵対関係にあったことを指摘しました。しかし、両国は互いの国力と周辺地域への影響力の大きさを理解していたため、これまではイランの核開発が進んでも米国は直接攻撃に手を出さなかったと説明。トランプ政権も核交渉に持ち込もうとしていましたが、イスラエルのイランへの直接攻撃が始まったことで、米国も今回の軍事行動に引きずり込まれたとの見方を示しました。
バンカーバスターとは？ その効果を巡る議論
イラン核施設攻撃の決定に関連するトランプ米大統領
地下施設攻撃に使用されたバンカーバスターは、通常の爆弾が地表で爆発するのに対し、地中に深く突き刺さってから爆発する特殊な爆弾です。イランのフォルドゥ施設は硬い岩盤の地下80～90メートルにあるとされていますが、バンカーバスターの最大到達深度はおよそ60メートルと言われています。このため、今回の攻撃でフォルドゥの濃縮工場に本当に甚大な被害を与えられたのかどうかについては、専門家の間でも現在意見が分かれている状況です。
一部のイランメディアは、攻撃を受けた3つの核施設にあった濃縮ウランは事前に別の場所に移されていたと報じています。これについて武隈氏は、たとえ被害があったとしてもイラン側はそれを認めないだろうとしつつも、イスラエルの攻撃が開始されてから既に10日が経過しており、攻撃が予想されていた状況を考慮すると、イラン側が濃縮度の高いウランを別の場所に移動・保管している可能性は非常に高いとの見解を示しました。したがって、今回の米軍による3施設への攻撃が、イランの核開発の進捗をどれだけ効果的に遅らせることができるかについては、大きな疑問が残ると締めくくりました。
出典:
Yahoo News / ABEMA Times
