大阪・関西万博、開幕2ヶ月:来場者満足度と浮き彫りになる課題

大阪・関西万博は2025年4月13日の開幕から2ヶ月が経過しました。会期序盤にも関わらず、会場建設の遅れやパビリオン出展の課題などが報じられてきた一方で、来場者数は700万人を超え、一見「盛況」という様相を呈しています。こうした状況下、AERA編集部が実施した読者アンケートでは、回答者の約6割が「行った」または「行く予定がある」と回答し、特に「行った」方の満足度は高い傾向が見られました。しかし、計画段階から大幅に膨張した予算や、万博そのものの開催意義を巡っては、国民の厳しい目が依然として向けられています。本稿では、このアンケート結果を基に、開幕から2ヶ月を経た大阪・関西万博の現状と、そこから見えてくる光と影を探ります。

アンケートで見る来場者の声と地域差

今回AERA編集部が実施した「大阪・関西万博」に関する読者アンケートは、6月11日から18日にかけてインターネット上で行われ、1128人から回答が得られました。回答者のうち45%が近畿地方在住者でした。

アンケート結果によると、大阪万博に「行った」という回答者は全体の41.8%、「行く予定がある」は18.7%となり、合わせて60.5%が何らかの形で万博に関心を示しています。特に近畿・中国・四国地方に限定すると、この割合は72.7%にまで上昇しますが、関東地方では45.5%にとどまっており、地域による関心の温度差が明確に表れました。

また、「行った」と回答した方の中では、「開幕当時から行きたいと思っていた」が66.2%を占める一方、口コミや報道などを見聞きするうちに興味を持ったという方も28.0%いました。実際に万博を訪れた方の満足度は「とても満足」「ある程度、満足」を合わせて8割を超えており、来場者の体験価値は高いことがうかがえます。

高評価の施設と交流体験

来場者の満足度を支える要素として、アンケートでは具体的な施設や体験に関する高評価が多く寄せられました。最も多く名前が挙がったのは、会場のシンボルでもある「大屋根リング」で、回答者の75.8%が良かった点として挙げています。次いで「海外パビリオン」も70.6%から支持を得ています。

個別のパビリオンでは「イタリア館」が特に注目を集めており、古代ローマ時代から現代アート、最新科学技術までを融合させた展示内容が評価されています。「過去の芸術から未来の科学技術まで体感できた」「最先端の技術が披露される万博で、2世紀に造られたアトラス像を見られたことに感動」といったコメントが寄せられました。

アメリカ館、フランス館などの主要国に加え、中国、オーストラリア、シンガポールといった国々、さらにはヨルダン、クウェート、トルクメニスタンといった馴染みの薄い国のパビリオンも推薦する声があり、普段触れる機会の少ない国々の文化や現状を知る良いきっかけになったとの意見が多数見られました。

また、iPS細胞で作った拍動する心筋シートなどを展示する「大阪ヘルスケアパビリオン」も多くの支持を集めています。さらに、施設だけでなく、万博という非日常空間での人との交流も来場者にとって価値ある体験となっているようです。「初対面の方との交流が楽しみ。単独万博している来場者同士の会話や、各パビリオンスタッフさんとの会話もしかり。知らないを知るに出来る瞬間が快感」といった声は、万博の多様な楽しみ方を示しています。

大阪・関西万博会場を囲む木造の大屋根リング。来場者から高い評価を得ている景観。大阪・関西万博会場を囲む木造の大屋根リング。来場者から高い評価を得ている景観。

消えぬ予算膨張と開催意義への疑問

来場者の満足度が高い一方で、大阪・関西万博には開幕前から指摘されてきた根深い課題が存在します。最も大きな問題は、当初計画を大幅に上回る事業費の膨張です。会場建設費だけでも当初予算から約2倍の2350億円にまで膨らみ、警備費や交通インフラ整備費なども含めると、その総額はさらに増加しています。

こうした巨額の公費投入に対し、万博の開催意義や費用対効果を疑問視する声は根強く、特に万博に「行きたくない」と回答した層からは、予算の問題や必要性への疑問が理由として多く挙げられています。メディアや世論の厳しい目は、単なるイベントとしての評価にとどまらず、税金の使途や国家プロジェクトとしての妥当性といった、より広範な政治・社会的な論点に及んでいます。

万博が特定の層には満足度の高い体験を提供している一方で、国民全体としては依然としてそのあり方や価値について議論が続けられている状況であり、「盛況」という表面的な数字の裏側には、解決すべき多くの課題が横たわっていると言えます。

結論

大阪・関西万博は開幕から2ヶ月を経て、来場者数は順調に推移し、実際に会場を訪れた人々の間では概して高い満足度が得られていることがアンケート結果から明らかになりました。特に、大屋根リングや多様な海外パビリオン、ユニークな体験施設などが好評を博し、「知る」ことや人との交流を楽しむ場として機能している側面が強調されています。

しかし、その一方で、建設費をはじめとする予算の記録的な膨張や、万博開催の意義そのものに対する国民の疑問は解消されていません。この「来場者の満足度」と「社会全体の費用対効果・意義への疑問」という二重の評価は、大阪・関西万博が抱える複雑な現状を象徴しています。今後、残りの会期を通じて、これらの課題にいかに向き合い、万博のレガシーをどのように社会に還元していくかが、引き続き重要な論点となるでしょう。

参考文献

大阪・関西万博、開幕2カ月で「盛況」は本当か アンケートでわかった来場者のホンネと地域による“温度差”