【日本の議論】巨大IT企業の個人情報収集 「データ集積が次の飛躍生む」「まず消費者の不安払拭を」

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【日本の議論】巨大IT企業の個人情報収集 「データ集積が次の飛躍生む」「まず消費者の不安払拭を」


 「プラットフォーマー」と呼ばれる巨大IT企業は、使い勝手の良いサービスで利用者を増やす一方、個人情報を独り占めしているとの批判が根強い。ただ、規制強化は企業の成長阻害の要因にもなりかねず、慎重な判断が求められている。個人情報収集の課題をニッセイ基礎研究所の中村洋介主任研究員とヤフーの中谷昇執行役員に聞いた。

 中村洋介氏「まず消費者の不安払拭」

 --デジタル分野で個人情報の在り方が取り沙汰されたのはなぜか

 「一つは、大手就職サイトがサイト内で得たデータを分析し、学生の内定辞退率に応じたスコアを算出し、契約企業に販売・提供していたことが問題になった。平成25年に鉄道会社が乗降駅や生年月、性別などのデータを外部企業に販売したが、利用者に対し事前に十分な説明がなく、批判や不安視する声が上がって中止に追い込まれたことも個人情報の利活用に向けた議論が進むきっかけになった」

 --鉄道会社のデータ販売は何が問題だったのか

 「提供した外部企業から情報が流出したり、個人の他の情報と合わせて何かが分かってしまったりといった懸念があるためだ。その後、個人を特定できないよう加工した情報は本人の同意がなくても第三者に提供可能となったが、データの外部販売で、他の企業はデータ活用に二の足を踏んだ」

 --企業側の意識はどうあるべきか

 「国の成長戦略、生産性、経済成長を上げていくという意味でも、データ活用は鍵になっている。人工知能(AI)は、データの量が少ないと価値が存分に発揮できない。ただ、保有する大量の個人情報を活用し、インターネット検索や会員制交流サイト(SNS)での広告を展開することに対し『薄気味悪い』『気持ち悪い』との声が増えている。信用スコアもそうだが、人の人生を決めてしまうところまで個人情報が使われると、拒否反応も出てくる。消費者の不安を取り除いた上で、価値あるデータを集める仕組みが、今まで以上に問われる」

 --個人情報の規制は、民間企業による自主規制ルールで進めるべきか、政府がもっと介入すべきか

 「政府が政策を打ち出すのであれば、過度な規制強化はイノベーション(技術革新)を阻害すると主張する経団連などとの調整が必要だ。何があったら駄目なのかをはっきり線引きしないと、企業活動が萎縮してしまうからで、はっきりしたルール作りは必要だ。一方で企業側が自らを律したルールを作っていくことは当然求められる。難しい論点を含むが、個人情報保護とデータの有効活用のバランスを取った制度設計、運用が求められる」

 --規制が進むことで、新規企業が参入しづらくなるとの指摘もある

 「個人情報をビジネスとする動きは、ここ数年、ベンチャー企業で出ている。規制をきつくすれば、体力のない企業は新規参入しづらい」(飯田耕司)

 なかむら・ようすけ 昭和55年、埼玉県出身。平成15年、日本生命保険入社。年金運用、株式投資、ベンチャー・キャピタリスト業務などを経て、29年からニッセイ基礎研究所。専門分野は日本経済、ベンチャー。

中谷昇氏「データ集積が生む飛躍」

 --国内外で巨大IT企業に対する規制強化が進んでいる

 「欧州で始まった波だ。2013年に米中央情報局(CIA)元職員のスノーデン氏が米国の情報監視活動を暴露した事件でIT大手による情報収集の協力が判明、膨大な個人情報を勝手に集めて使うのはとんでもないと一気に議論が進んだ。欧州では昨年5月に企業に個人情報保護の徹底を課す『一般データ保護規則(GDPR)』が施行されたが、日本でも国際協調を前提にしたデータ流通の仕組みづくりが必要になっている」

 --IT大手のサービスで利便性が高まる一方、市場での支配力が強まることが懸念される

 「データの集積はマイナスとは思わない。次への飛躍の足がかりだ。問題はデータをどうマネジメントするかという『データガバナンス』の理解が共通化されていないことだ。データの収集、保管、提供の各段階でプライバシーの扱いや説明責任などをきちんと定めておけば、消費者も安心できる。データを集めてどう使うかを明確にし、同意をいただいた上で、堂々と使えばいいと思う」

 --ヤフーが7月に始めた信用スコア事業では個人情報の取り扱いをめぐって炎上した

 「インターネット通販の利用額などから作成する信用スコアが初期設定で利用者の同意なく作成されるようになっていたため、批判の声が上がり、10月からはスコアを作成しない状態を初期設定に見直した。日本でネットサービスのど真ん中を走ってきたが、欧州で起こった個人情報保護のゲームチェンジを察知できず真摯(しんし)に反省している」

 --政府の巨大IT企業への規制に対する期待や懸念は

 「国内外の事業者間で同じ土俵で法律が同じように適用される状況をつくってもらいたい。個人情報保護法では海外事業者に是正命令などの行政処分は出せず、電気通信事業法が定める『通信の秘密』も海外事業者は原則、適用の対象外。ただでさえ体力差がある上にさらにおもりを付けて走らされているようなものなので、一種の不平等競争条件を変えてほしいと思う」

 --技術革新などを阻害しない規制の在り方について

 「政府による行為規制は産業育成的には失敗する。事業者の自主規制を主体に政府が事後監督する共同規制が望ましい。データ経済になると、今までのルールでは公正な競争が保たれなくなっている。企業が社会的責任を果たす意味でも、政府と議論して自分たちができることを明確にし、政府にモニターしてもらう。こうした関係が築ければ行為規制よりも柔軟な対応ができると思う」

(万福博之)

なかたに・のぼる 昭和44年、神奈川県出身。平成5年、警察庁入庁。国際刑事警察機構(ICPO)ITシステム局長、ICPOがシンガポールに設置したサイバー犯罪対策拠点の初代総局長などを歴任し、31年4月から現職。

【記者の目】カーナビでも警鐘

 インターネット上で検索やメールを無料で提供する見返りに、集めた個人情報を使い巨額の広告料を稼ぐビジネスモデルへの視線が一段と厳しくなっている。

 公正取引委員会のアンケートによると、個人情報の収集、利用、管理などについて「懸念がある」と答えた割合は75・8%。その理由について、データの情報流出、不要な広告やメールが届くことを挙げている。

 だが、懸念する利用者のほとんどが「なんとなく」ではないだろうか。公取委のアンケートでも、サービスで「不利益を受けたと感じたことはない」と答えたのは66・8%で、次いで「分からない」が18・2%となっている。

 カーナビでは、行動履歴の取り扱いなどが個人情報保護の観点から懸念されたが、議論や対応を経て問題が収束した前例もある。便利なサービスへの不安がカーナビ同様に杞憂(きゆう)で終わるような制度設計を望む。(飯田耕司)

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