デイヴィッド・グリッテン記者(BBCニュース)、タラネフ・ファサリアン記者(BBCペルシャ語)
「昼も夜も同じだ。身動きがとれないような気がする。一日中、そして一晩中、天井を見つめているだけだ」
「次に何が起きるのか、ずっと考えている。たえず不意を突かれて、驚かされている」
イラン国民のシャーラさん(仮名)は、身の安全を守るために名前を変更している。アメリカがイランの主要なイラン核施設3カ所を夜間に空爆したことを受け、恐怖と怒りをBBCペルシャ語サービスに訴えた。この米軍空爆は、イラン国内で高まる緊張と市民の不安を浮き彫りにしている。
米国による核施設空爆とその反応
アメリカのドナルド・トランプ大統領は21日、イランのイスファハン、ナタンズ、フォルドの各核施設を「抹消した」と発表した。これらの施設はイランの核開発計画において中心的役割を担っている。トランプ大統領はイランの指導者らに対し、「平和か悲劇」の選択を迫ると述べ、強い姿勢を示した。
これに対し、イランのアッバス・アラグチ外相は、アメリカが「重大な一線を越えた」と強く非難した。同外相は、この攻撃が「永続的な結果を招く」と警告し、米国の行動に対する報復を示唆した。
イスラエルの先制攻撃とイランの報復
アメリカの攻撃は、イスラエルがイランに対して大規模な空爆作戦を開始してから、わずか1週間余りで発生した。イスラエルは、イランの核および弾道ミサイル計画を自国の存続への脅威と位置づけ、その排除を目的としたと説明している。
イラン保健省によると、これまでに少なくとも430人が殺害された。ただし、実際の死者数はその2倍に上ると主張する人権団体もある。これに対し、イランはイスラエルの都市にミサイルを発射することで対抗した。イスラエル当局によると、この攻撃で24人が殺害されたという。両国の応酬により、地域全体の緊張が極めて高まっている。
情報制限下の市民生活
イラン政府はこの1週間、インターネットへのアクセスを大幅に制限している。この措置は、現地の状況に関する情報の流通を妨げ、市民が家族や外部と連絡を取ることを困難にしている。このような情報統制は、国民の不安を一層募らせている。
イランの首都テヘランで米国とイスラエルの攻撃に抗議する人々
高まる緊張下での国民の声
情報制限がある中でも、メフリさん(仮名)はBBCペルシャ語に音声メッセージを送り、米軍空爆に対する動揺と怒りを語った。
「何かについてこれほどの悲しみと怒りを感じたことは、これまでの人生で一度もなかったと思う」と、メフリさんは話した。「でもある意味で、物事が奇妙なほどはっきりしたという感じもする。自分が自分を超えた何かとつながっているのだと、思い出させてくれる」。
メフリさんはまた、「この戦争は、このイランの戦争は、本質的には3人の個人による争いだ。三つの国の指導者が、それぞれのイデオロギーに突き動かされている」と、アメリカのドナルド・トランプ大統領、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師を指して話した。「イスファハンのような地名を口にしたり、『イランの空域を掌握した』などと突然宣言したりするのを聞くと、激しい怒りがこみ上げてくる。私にとっては単なる言葉ではなく、神聖なものだから」と、自国の象徴的な場所への攻撃に感情的な反発を示した。
イラン北西部マク出身のホマユーンさんは、イランが和平に応じなければさらに攻撃されることになると警告したトランプ大統領に対し、毅然とした姿勢を示した。
「確かに今は厳しい時期だ。でも私たちは最後まで自分たちの国を支える。必要ならば、祖国と名誉のために命を捧げる覚悟だ」と、ホマユーンさんは語った。「アメリカとその手先が、我が国で勝手な行動を取るなど、絶対に許さない」。
米国・イラン双方のさらなる警告
トランプ大統領は21日夜、イランが報復に出た場合、「今夜目にしたものをはるかに上回る力で応じる」と警告し、さらなる軍事行動の可能性を強く示唆した。
一方、イランのアラグチ外相は22日にトルコで開かれた記者会見で、「イランは自国の安全、利益、国民を守るためのあらゆる選択肢を保持している」と述べた。また、アメリカが「自らの行動の結果に対して全面的な責任を負う」と非難した。イランの公式な立場として、対抗措置を取る権利があることを強調した。
イランの精鋭部隊、イスラム革命防衛隊(IRGC)は、中東にあるアメリカ軍基地は「強みではなく、弱点だ」と表現し、これらの基地が潜在的な標的となりうることを示唆した。
強硬派からの主張とホルムズ海峡
イスラエルが空爆作戦を開始する前、イランの国防相は、イランの核計画への攻撃にアメリカが関与した場合、「手の届く範囲にあるすべてのアメリカ軍基地を標的にする」と警告していた。これは、米軍の展開が攻撃を招く可能性があるというイラン側の認識を示している。
また、一部の強硬派は、ペルシャ湾に展開する米海軍の艦船を攻撃対象とするよう主張しているほか、世界で最も重要な海上輸送路の一つであるホルムズ海峡の封鎖を求める声も上がっている。これは、軍事的、経済的に大きな影響を及ぼす可能性のあるエスカレーションのシナリオとして議論されている。
平和への願いと国内問題への批判
あるイラン人男性はBBCペルシャ語に対し、「これが戦争の激化のピーク」だと願っていると言い、「ここからは沈静化に向かう」と期待していると話した。これは、これ以上の衝突を避けたいという市民の切実な願いを表している。
「イランには一定の理性があるので、アメリカを標的にした報復が、完全な自殺行為だと理解している」と彼は述べ、イランが自滅的な行動は取らないだろうとの見方を示した。
この男性はさらに、「数日後に子どもが生まれる予定だ。その誕生が、新しいイランの誕生と重なることを願っている。国際社会と内政問題の両方に対して、新鮮な姿勢を取るイランであってほしい」と、国の未来への希望を語った。彼はまた、「監視カメラや治安部隊はヒジャブの着用強制を目的にするのではなく、本当の脅威に注力すべきだ。大きくなる子どもたちにも、それを知ってもらいたい」と述べた。イランには、女性にスカーフの着用を義務づける厳格な法律があり、2022年にはこれに反発する大規模な反政府デモと、それに対する致命的な弾圧が発生している。市民の間には、対外的な脅威よりも国内の問題への対応を求める声も根強い。
核開発費用への批判
イランの核開発にかかる費用について、別の住民は批判的だった。「フォルドやナタンズ、そしてイランの核計画全体は、私の涙で、あなたの血だった。政府は何年にもわたって国民の喉元を切り裂き、あの施設を建設するために核関連の予算を増やし続けた」と、この人は書いた。これは、核開発が国民生活を犠牲にして行われているという認識を示している。
将来への期待と現体制への不満
ファルハドさん(仮名)は、「今回の出来事を喜んでいるわけではないが、これまでのイラン・イスラム共和国のやり方は到底耐えられるものではなかった。イランに良い未来が訪れることを願っている」と語った。これは、現在の体制への不満と、変化への期待が入り混じった複雑な感情を表している。
一方、アルメニアとの国境にある検問所では、家族と共に首都テヘランから逃れてきた若い女性がBBCの取材に応じ、外国勢力が押し付ける体制転換には反対だと話した。「私たちは国内で、自分たちの手で変化を起こそうとしていた。アメリカやイスラエルからもたらされる変化が、良い変化になるだとは思わない」と、この女性は語った。これは、外部からの介入ではなく、イラン国民自身の手による変革を望む声を示している。
イランの核施設への米軍空爆は、中東の緊張を一層高めている。公式な声明応酬に加え、市民からは恐怖、怒り、そして変化への期待や希望が混ざり合った様々な声が聞かれ、情勢の複雑さを物語っている。