天皇、皇后両陛下の長女である愛子さまがラオスを訪問され、パーニー国家副主席主催の晩餐会に準国賓待遇で臨まれました。日中はラオスの伝統衣装で仏塔を参拝された愛子さまは、夜の晩餐会では日本の伝統美を象徴する友禅染の本振袖と、菊紋が華やかに咲く西陣織の帯をまとい、そのお姿はまさに「両国の懸け橋」として注目を集めました。
ラオスとの友好を象徴する装い
晩餐会で愛子さまは「両国の懸け橋となって、ラオスのチャンパーや日本の桜のように、美しい花を咲かせていくことができればと思います」と述べられ、ワイングラスを片手に和やかに乾杯されました。その一連の優雅な所作は、深い感銘を与えました。お召しになった本振袖の地色は、淡い黄緑色を指す「若芽色」。この伝統色は、「若」と「芽」の文字が重なることで、早春の若芽のみずみずしさを表し、愛子さまの明るい笑顔を思わせるような優しい色合いが特徴です。
パーニー国家副主席主催の晩餐会に臨む愛子さま。若芽色の本振袖をお召しになり、肩には花丸文様が描かれている。
皇室の品格を添える菊紋と伝統文様
特に目を引いたのは、愛子さまが身につけられた西陣織の帯です。正面には、皇室の象徴である菊を連想させる「菊」の文様が咲き誇り、晩餐会の格式にふさわしい品格を添えていました。京都市で京友禅の誂えを専門とする「京ごふく二十八」を営む原巨樹さんは、この帯について「2024年秋の園遊会でお召しであった袋帯です。菊の意匠を囲むのは、舞楽の装束にも用いられる『舞楽菱(ぶがくびし)』文様。菱文に唐草などが織り出された格調高い意匠です」と解説しています。この日の本振袖には天皇家の菊紋は直接見られませんでしたが、原さんは晩餐会に相応しい格式の着物であると評価しています。
吉祥柄「花丸文様」の魅力と歴史
愛子さまの本振袖には、菊や梅に橘、五三の桐、紅葉、松、牡丹など、四季折々の草花が染めや刺繍で表現されていました。原さんが特に注目したのは、草花を円形に図案化した「花丸(はなまる)文様」です。「円(えん)」が「縁(えん)」に通じることから、吉祥柄として古くから親しまれてきた文様です。その愛らしいデザインは、描き方や染め方によって格式の度合いが異なると言います。「草花を生き生きと写実的に描くよりも、愛子さまのお振袖のように、かっちりと文様化した『花丸文』の方が、格式の高い印象を与えます」と原さんは語ります。
「花丸文」は能装束から小袖、現代の着物にいたるまで見られる人気の柄です。その原型は正倉院や平安時代の有職文様にも見られますが、大陸の影響かやや堅さや力強さが勝るデザインでした。それが日本の文化の中で柔らかな「丸文」へと変化し、江戸時代に現在の形へと完成されたとされています。原さんは、「愛子さまの『花丸文』は、振袖らしい可愛らしさと格式を兼ね備えた図案に描かれています」と述べています。
緻密な織りによる綸子生地の美しさ
また、紗綾(さや)型の地紋が織り合わされた綸子(りんず)生地も見事でした。光の差し加減や角度によって、卍(まんじ)をつなぎ菱状にくずした紗綾型の意匠の陰影が浮き出る手の込んだものです。原さんによると、「愛子さまの綸子は、反物のひと幅に、紗綾型と菊、蘭が大きく表されています。こうした大きな柄の地紋は、若い時期にぜひお召しいただきたいもので、皇后雅子さまは、もう少し小さな柄の本紋をお使いです」とのことです。
2024年秋の園遊会でも、愛子さまは同じ「菊紋」と「舞楽菱」の西陣織の帯をお使いでした。その際は、淡い紅色の本振袖に合わせて、可愛らしさを感じる色味で全体をまとめられていました。今回のラオスでの装いは、日本の伝統文化の美しさと皇室の品格を世界に示し、両国の友好関係を深める象重な機会となりました。





