「使わないと保険料が戻る」医療保険は本当に「損しない」のか? 専門家が指摘

「これは損をしない保険だと思っています。入院とかしなかったら、それまで払っていた保険料が、全額、戻ってくるんですよ。いいと思いませんか?」――。これは、有料の保険相談を長年続けてきた専門家、後田亨氏のもとに寄せられたお客様の声です。しかし、この「使わなかった保険料が戻ってくる」という特徴を持つ医療保険について、後田氏は「本当に、保険と呼んでいいのだろうかと感じています」と疑問を呈しています。東京海上日動あんしん生命の医療保険「メディカルKit R」を例に、その仕組みと専門家の指摘を見ていきましょう。

「保険料が戻ってくる」仕組みを象徴するお金のイメージ「保険料が戻ってくる」仕組みを象徴するお金のイメージ

「リターン」機能の詳細

「メディカルKit R」の保障内容は、一般的な医療保険に見られる入院給付金(1日あたり5000円)や手術給付金・放射線治療給付金(1回につき5万円ないし2万5000円)といった「主契約」部分が中心です。これに先進医療給付金などの「特約」を付加することもできます。しかし、この保険を特徴づけるのは、公式サイトでも「リターン(Return)」とうたわれている機能です。

この機能の仕組みは、「健康還付給付金」を受け取る年齢を契約時に設定することから始まります。例えば、30歳で加入した男性が70歳を受け取り年齢に設定した場合、70歳になるまでに主契約部分の給付金を一度も受け取らなかった場合、それまでに払い込んだ主契約の保険料が全額払い戻されます。月額保険料2890円(30歳男性例)の場合、40年間で払い込んだ保険料総額、138万7200円が70歳時点で戻ってくる計算になります。

給付金受取時の影響

では、もし70歳になる前に給付金を受け取った場合はどうなるのでしょうか。例えば、入院給付金として合計10万円を受け取っていたとします。この場合、70歳時点で払い戻される金額は、払い込んだ保険料総額138万7200円から、受け取った給付金の10万円を差し引いた128万7200円となります。つまり、「使わなかった保険料」が戻ってくる、というわけです。

「損をしない」と感じる仕組みへの疑問

この仕組みを知ったお客様は「損をしない保険だ」と感じました。しかし、ここで専門家の後田氏は鋭い問いを投げかけます。それは、「保険料総額から差し引かれる給付金相当額の10万円は、一体誰のお金だろうか」という点です。この問いかけは、「使わなかった保険料が戻ってくる」という謳い文句の裏に隠された、お金の本質に関する疑問を提起しており、この種の保険が一般的な掛け捨て型医療保険や貯蓄型保険とどのように異なるのか、その価値について深く考察する必要があることを示唆しています。

参照元:https://news.yahoo.co.jp/articles/c827366bc2081ad707089af85e4982bbd0feaeb7