通常国会 事実上閉幕で「ガソリン税暫定税率廃止」法案は廃案に 運輸業界は落胆

暮らしに直結する重要法案を多く積み残し、事実上の閉幕を迎えた通常国会。企業・団体献金や選択的夫婦別姓といった課題が“先送り”される中、特に注目されたのが、野党7党が提出した「ガソリン税の暫定税率を廃止する法案」でした。この法案は審議されたものの…。

ガソリン給油ノズルと背景の道路。燃料費高騰やガソリン税暫定税率に焦点を当てるニュース記事のイメージ。ガソリン給油ノズルと背景の道路。燃料費高騰やガソリン税暫定税率に焦点を当てるニュース記事のイメージ。

法案の行方と与野党の立場

野党提出のガソリン税暫定税率廃止法案に対し、与党側は「欠陥だらけ」「ポピュリズム法案」と強く反対。結局、採決は行われず、廃案となりました。自民党の石井準一参院国対委員長は「議長の判断により金融委員会で取り計らい、本会議で趣旨説明と質疑を行った。異例中の異例だ」と述べた上で、「総括的に勘案し、採決に値しない」と、その理由を説明しました。

通常国会で審議された主な法案の成否を示す表の画像。議論が深まらず積み残された法案があることを示唆。通常国会で審議された主な法案の成否を示す表の画像。議論が深まらず積み残された法案があることを示唆。

燃料費高騰、運輸業界への打撃

今回のガソリン暫定税率廃止法案の廃案により、直接的な影響を受けるのが運輸業界、特に燃料費負担が大きいドライバーたちです。軽貨物ドライバーとして働くこうすけさんは、日々の燃料費に頭を悩ませています。

軽貨物ドライバーの現実

こうすけさんによると、月間約1500km以上の走行でガソリン代は平均で3万5000円から4万円に達するといいます。法案が成立していれば、月あたり約5000円の節約が見込めたため、「ドライバーの生活にも多少なりとも余裕が出る」と期待していただけに、今回の廃案には「残念」と落胆の色を隠しません。燃料費が全て実費負担である現状では、暫定税率の廃止は切実な願いでした。
さらに、電話一本で「簡単に来てくれる」と思われがちだが、実際にはガソリン代を自己負担して移動する必要があり、「呼ばれたが不在だった」といったケースも珍しくないという、この業界の現実を語りました。

トラック業界の苦境

ガソリンに加え、軽油の暫定税率見送りも、軽油を主な燃料とするトラック業界に大きな影響を与えています。埼玉県で運送業を営む川里運輸倉庫の島村夕紀子取締役は、高止まりする燃料費が経営を圧迫している現状を訴えます。
島村取締役は、「廃止への期待はあったが、『またか』というのが正直な気持ちで、周りの運送会社からも無理だろうという声が聞かれた」と、半ば諦めにも似た業界の雰囲気を伝えました。具体的には、直近の4月請求分で前月比約6円、さらに昨年12月から4月にかけて約10円弱の値上がりがあったと明かしました。燃料費が20%上昇したことで、全体の経費が1割増加している状況にあり、「とても大変になっている」と述べます。適正な運賃への転嫁を目指し努力しているものの、「なかなか難しい状況」であり、「国からのバックアップが必要だと強く感じる」と語りました。全日本トラック協会は、燃料価格が1円下がれば業界全体で年間約150億円の負担軽減につながると試算しており、国による負担軽減策の必要性を訴えています。

燃料費とドライバー不足の関連性

燃料費の高騰と負担の継続は、運輸業界が抱えるもう一つの深刻な問題、ドライバー不足にも影を落としています。ドライバー歴30年のベテラン、森山さん(75)は、賃金が長年ほとんど変わっていない現状を指摘します。「賃金が良くならないということは、この業界に魅力を感じない」と話し、それが若い世代の参入を阻害している要因の一つだと分析します。結果として、「私のような年寄りが働かないとまずいようなことになっている」と、高齢ドライバーに頼らざるを得ない業界の実態を語りました。

“積み残し”と政治への影響

多くの重要法案が“積み残し”となった国会閉幕後の政治情勢として、22日に投開票が行われた東京都議会議員選挙の結果があります。自民党は歴史的な大敗を喫し、過去最低の議席数となりました。自民党の木原誠二選対委員長は、都議選の結果が「直に参院選に直結するものではない」としつつも、「参議院選挙として、しっかりと戦っていきたい」と述べ、気を引き締めました。今回の通常国会での様々な課題の「先送り」が、来る7月の参院選にどのような影響を及ぼすのか、注目されます。

重要法案の審議が尽くされず、特にガソリン税暫定税率の廃止が見送られた今回の通常国会。燃料費高騰に苦しむ運輸業界からの落胆の声は大きく、経営やドライバーの生活、さらには業界全体の担い手不足にも繋がる深刻な問題となっています。こうした国会の“積み残し”が、今後の政治、特に間近に迫る参院選にどう影響するのか、引き続き注視が必要です。

[参照] サン!シャイン (6月24日放送), FNNプライムオンライン (Yahoo!ニュース配信)