アコード一族の異端児?ホンダ アスコットイノーバの短すぎる生涯

現在、自動車メーカー各社は車種整理を進めていますが、かつては販売網拡大のため多様な派生モデルや兄弟車が存在しました。ホンダも例外ではなく、多くの車種を展開。その中でも特に注目される機会が少ないモデルが「アスコットイノーバ」です。

プリモ店に現れた上級スポーティハードトップ

アスコットイノーバは、1992年3月にホンダプリモ店専売の4ドアハードトップとして登場しました。既にプリモ店には1989年から4ドアセダンのアスコットがラインナップされており、その派生車種という位置づけでした。アスコット自体は4代目アコードの兄弟モデルでしたが、アコードのような多様なボディバリエーションはなく、より保守的なセダンでした。しかし、プリモ店ではシビックやビートといったスポーティモデルも扱っていたため、アスコットイノーバは上級かつスポーティなキャラクターが与えられました。

ホンダ アスコットイノーバのフロント斜めからのショット。特徴的な4ドアハードトップのシルエットが見て取れる。ホンダ アスコットイノーバのフロント斜めからのショット。特徴的な4ドアハードトップのシルエットが見て取れる。

流麗なデザインと独自のエンジン

スポーティさを強調するため、セダンボディのアスコットに対し、アスコットイノーバはサッシュレスドアを持つ4ドアハードトップを採用。クーペを思わせる流麗なプロポーションと低い全高が特徴でした。エンジンラインナップもアスコットや他の兄弟車に搭載されていた2Lに加え、このアスコットイノーバのみに設定された2.3LのDOHCエンジンが存在しました。ハイオク仕様で165psを発生するこのエンジンは、当時の4代目アコード系派生モデルの中では異色の存在感を放っていました。

本家モデルチェンジが生んだ悲劇?

アスコットイノーバが登場した翌年の1993年10月、本家アスコットが2代目へフルモデルチェンジしました。この2代目アスコットは、インスパイアやビガーが使用していた直列5気筒エンジン搭載の新プラットフォームを採用。エンジンも2Lと2.5Lとなり、アスコットイノーバが持つ2.3Lエンジンの優位性が相対的に薄れてしまいました。イノーバも追ってモデルチェンジするかと思われましたが、1994年2月のマイナーチェンジで新グレード追加に留まり、大きなテコ入れはされず。そして1996年12月、わずか4年ほどの生涯を終え、一代限りで姿を消すこととなったのです。

このように、アスコットイノーバはプリモ店の戦略車種としてユニークなスタイリングとエンジンを与えられましたが、本家アスコットの刷新という外部要因もあり、短命に終わったモデルと言えます。ホンダの多チャンネル時代を象徴する、ある意味忘れられた存在と言えるでしょう。

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