税収上振れは「政府の裏金」か?自民党給付金2万円の財源問題(須田慎一郎)

来月実施予定の参議院選挙に向け、自民党が打ち出した公約の一つに「1人当たり2万円の給付金」案が再浮上しています。その財源として想定されているのが、2024年度の「税収上振れ分」です。ジャーナリストの須田慎一郎氏は、この税収上振れ分が、あらかじめ計画され、財務省や一部の政治家によって自由に使える資金となっている現状に問題提起しています。本稿では、須田氏の分析に基づき、給付金財源としての税収上振れ分が抱える問題を深掘りします。

参院選に向け再浮上した「1人2万円給付金」

来月実施される参議院選挙に向け、自民党は「賃上げ」を中心とした成長戦略、具体的には2040年までにGDPを1000兆円に引き上げ、国民所得を1.5倍にするという目標を掲げています。これは経済産業省のレポートに基づくとされています。しかし、消費税減税を主張する野党が多い中、15年後の所得増だけでは有権者の共感を得にくいとの認識からか、かつて不評により撤回された「1人2万円の給付金」案が再び検討されることになりました。

2025年6月11日 自民党本部での森山裕幹事長による記者会見2025年6月11日 自民党本部での森山裕幹事長による記者会見

これは、もともと消費税減税を公約に盛り込みたかった連立相手の公明党が、自民党執行部との交渉で減税案を断念せざるを得なくなった結果、その代替策として浮上した側面があります。4月上旬に自民党が検討した「国民一人当たり3万〜5万円」の給付金構想が世論の反発で撤回された経緯を踏まえれば、今回再び同種の政策が俎上に載せられたことには驚きを禁じ得ません。これはあくまで公明党に配慮し、選挙対策として再び「給付金」が持ち出されたものと見られます。

給付金財源「税収上振れ」の都合良い使われ方

今回の給付金の財源について、政府は「当初予想を上回る税収増加分」、すなわち「税収の上振れ」を充て、新たな国債発行は行わない方針だと説明しています。これは、見積もりより税収が多かった分を国民に還元するという建前です。物価高対策の一環としての給付金支給という説明もなされています。

しかし、ジャーナリストの須田慎一郎氏は、この「税収の上振れ」が極めて都合よく使われている現状に疑問を呈しています。須田氏によれば、この税収上振れ分は、あたかもあらかじめ上振れするよう設定されているかのように見え、結果として財務省や一部の政治家が自由に使途を決められる「裏金」のような財源となっているのではないかと指摘します。この透明性の低い使われ方が最大の問題点であると述べています。

今回の自民党が検討する給付金は、選挙対策や連立相手への配慮といった政治的な背景があり、その財源である「税収上振れ」の使われ方には不透明さが指摘されています。国民への還元という名目の裏で、特定の主体が自由に使える資金となっているのではないかというジャーナリストの視点は、今後の財政運営や政策決定プロセスにおける透明性の重要性を改めて浮き彫りにしています。

【参考資料】