「果てしなきスカーレットの制作現場が地獄らしい」ーー
公開まで半年を切ったあたりで、業界内にはそんな噂が流れていた。どんな作品でも公開直前の制作現場は地獄になりがちだが、3DCGアニメのそれは想像を絶するほどだ。
【画像】ガラガラすぎる…「果てしなきスカーレット」の空席っぷりに驚いた
そもそも、3DCGアニメは2Dアニメを作るより時間も費用もかかるケースが多い。2Dで描くより3Dにしたほうが安いんじゃないの? と勘違いしている人も多いが、安い予算ではまともなCGアニメーションを作れないためかなりの費用がかかる表現なのだ。
2025年11月21日に封切りされた細田守監督最新作「果てしなきスカーレット」。酷評されている裏には、どんなクリエイターの努力があったのか。実際に鑑賞した感想を踏まえ、3DCGアニメーターの所見と共に見ていこう。
■「懲役112分、罰金2000円」と酷評される理由
「果てしなきスカーレット」は、主人公・スカーレットが王である父を無実の罪で処刑した叔父・クローディアスに「復讐」を遂げるための物語だ。
しかし、スカーレットは本懐である復讐を遂げる前にクローディアスに殺されてしまい、死者の国をさまようシーンから物語ははじまる。復讐もできず何のために生きていたのかと絶望するスカーレットだったが、「実は死者の国にいる」というクローディアスに今度こそ復讐するために歩き出す──というストーリーだ。
2025年11月30日。「果てしなきスカーレット」公開翌々週の日曜日、劇場で鑑賞した。日曜日の16時台というゴールデンタイムにもかかわらず、とにかく空席が目立つ。筆者が観たスクリーンのキャパは189席だったが、実際に埋まっていたのは約2割程度だった。
真ん中付近のG列で鑑賞したのだが、筆者の前方にはたった5人しか人がいない。さらに、後にも精々十数人という閑散っぷり。観る前からその評価が決まっているようなものではないか。怖いもの見たさに鑑賞したことをすでに後悔しはじめていた。
映画がはじまって約5分。「どうして観に来てしまったんだろう」ーーそんな後悔が脳裏をよぎった。内容も画面も、最初から、とにかく暗すぎるのだ。
細田守監督作品といえば、自分が知らないワクワクするような色鮮やかな世界を楽しませてくれるのではなかったのか。「果てしなきスカーレット」の冒頭にあるのは、ほとんど色のないくすんだ世界と幾多もの死体だけなのだ。この時点で本作の鑑賞を「懲役」だと表現した気持ちが理解できてしまった。






