現代の沖縄を知るには歴史を知ることが欠かせない。学校の授業で学べなかったことを、今こそ把握しておきたい。「Wedge」2025年7月号に掲載の特集「終わらない戦争 沖縄が問うこの国のかたち戦後80年特別企画・前編」の内容を一部、限定公開いたします。 中国史が専門の早稲田大学教授・岡本隆司氏と現代中国が専門のジャーナリスト・富坂聰氏に琉球王国の時代から日中関係の変容、これからの中国との向き合い方などについて語り合ってもらった。アカデミズムとジャーナリズムを融合した視点から「沖縄問題」を考える。
【画像】教科書だけでは学べない、かつ、中国抜きには語れない「沖縄問題」…今だからこそ、日本人が知らない琉球王国の歴史にも、しっかり目を向けよ
編集部(以下、─)「沖縄問題」を考えるにあたって、なぜ、中国との関係性を振り返るべきなのか。
岡本 まず、我々が認識すべきこととして、沖縄はかつて琉球王国であり、中国とは約500年以上に及ぶ関係があったということ。一方、日本との関係は、江戸時代初期から薩摩藩に支配される時期があったが、後述するように1879(明治12)年、沖縄県を設置した「琉球処分」以降、わずか150年程度である。
歴史を生業とする私にとって、沖縄がかつて中国と長く深い関係があった事実を知らないまま、沖縄問題が語られることに違和感を覚える。沖縄問題は、中国の存在抜きにして語ることはできないと思う。
富坂 同感だ。私が専門とする現代中国の視点に引き付けて言うと、朝鮮戦争がそうであったように半島は戦争の火種になりやすい地域であり、大国の間で揺れ動くのは島国である場合が多い。沖縄、あるいは台湾はその象徴ではないかと思う。安全保障の観点から、沖縄が日本にとっての要衝であることは間違いないが、米中の動きが激しくなればなるほど、木の葉のように揺れ動く存在として見えてくる。
つい先日、ある中国人から「沖縄の人はよく我慢していると思う」と言われた。中国には沖縄の人に好感を持っている人が少なくない。逆に沖縄の人もそうかもしれない。
印象的だったのは、2012年に沖縄県で開催された日中ジャーナリスト交流会議で、県知事を含めて大勢の県関係者が出席し、中国人を歓待していたということだ。その厚遇ぶりは他の都道府県で開催された時とは、比較にならないほどだった。