立憲民主党の蓮舫・前参議院議員(57)が、次期参議院選挙に比例代表区から出馬することが決定しました。党は6月24日の常任幹事会でこれを正式に決定。しかし、この決定は波紋を広げています。蓮舫氏は昨夏の東京都知事選挙で敗れた際、「120万を超える人が『蓮舫』と書いてくれた。これで国政に戻るというのは私の中では違う。なんか渡り鳥みたいだ」と述べ、国政復帰を否定していました。このわずか1年足らずでの方針転換は、彼女の発言との整合性が問われる形となっています。
党内の根強い反発と影響
蓮舫氏の比例区からの擁立決定は、党内でスムーズに進んだわけではありません。むしろ、強い反発や軋轢を生んだと報じられています。関係者によると、「彼女を出すなら私が降りる!」と幹部に直接抗議した労働組合系の議員がいたほか、24日の常任幹事会に先立って開かれた役員会では、「彼女を擁立するならこの会議を出ていく」と席を立った幹部議員までいたとされています。
反発の背景には、立憲民主党が連合(日本労働組合総連合会)をはじめとする労働組合からの大きな支援を受けていることがあります。7月の参院選比例区では、すでに複数の労組系候補の擁立が決まっており、そこに蓮舫氏が加わることで、いわゆる「玉突き」の形で他の候補が当選圏から外れる可能性が懸念されました。このため、労組系を中心に反対の声が根強く上がっていたのです。
さらに、党外の事例も懸念材料となりました。5月に国民民主党が参院選比例区に山尾志桜里・元衆議院議員(50)を擁立すると発表した際、党内や支持者、そしてネット上で激しい批判を浴び、最終的に公認を見送った経緯があります。立憲民主党内でも、蓮舫氏のケースが同様に世論の反発を招き、支持率低下につながるのではないかという懸念の声も上がっていました。国政復帰を否定してから1年も経たない中での出馬決定は、こうした懸念を一層強める要因となったようです。
過去の選挙結果と求心力の変化
蓮舫氏の直近の選挙結果も、今回の決定に対する党内の複雑な感情に影響を与えています。昨夏の都知事選では、現職の小池百合子氏(72)との一騎打ちが予想されていましたが、結果は小池氏が当選し、2位には広島県安芸高田市の前市長・石丸伸二氏(42)が165万票を獲得して入り、蓮舫氏は129万票で3位にとどまりました。
蓮舫氏はこれまで、参議院選挙の東京都選挙区で強い地盤を築いてきました。2004年の初当選時には約92万票で3位、2010年には171万票、2016年には112万票を獲得し、いずれもトップ当選を果たしています。しかし、直近の2022年参院選では、得票数が67万票にとどまり、4位となりました。都知事選に関しても、石丸氏が出馬していなかったとしても、当選は容易ではなかったのではないかという分析もあります。かつての圧倒的な得票力に陰りが見える中での比例区からの出馬は、党として彼女の知名度や集票力に期待する一方、その効果を疑問視する声も存在することを示唆しています。
立憲民主党 蓮舫氏 参院選比例区からの出馬決定
良くも悪くも「話題の人」として
蓮舫氏は、その言動や経歴から、常に良くも悪くも世間の話題を呼んできました。参議院議員時代には、国会議事堂内でファッション誌の撮影を行い謝罪に至ったこともあります。また、民主党政権下の事業仕分けにおいては、次世代スーパーコンピュータ開発予算削減を巡り「世界一になる理由は何があるんでしょうか? 2位じゃダメなんでしょうか?」と発言し、科学技術関係者を中心に強い反発を招きました。
元々はモデル出身であり、情報番組のメインキャスターを務めるなど、メディアでの経験も豊富で弁舌も立つ人物です。こうしたタレント時代の知名度や発言力は、彼女の政治家としてのキャリアを支える一方、時に物議を醸す原因ともなってきました。国会議員となってからは、台湾籍と日本籍の二重国籍問題が取り沙汰されるなど、その一挙手一投足が注目を集めがちです。
今回の参院選比例区からの出馬決定も、大きな話題となっています。こうした「話題性」に党が活路を見出そうとした背景には、支持率低迷に苦しむ立憲民主党の現状があるのかもしれません。この出馬を強く推し進めたのは、党代表である野田佳彦氏(68)だったと報じられています。
出馬決定の裏にある力学
蓮舫氏の参院選比例区からの出馬決定は、党内の複雑な力学と、党執行部の戦略が絡み合った結果と言えます。労組系の反発や過去の選挙結果に対する懸念がある中で、なぜ野田代表は擁立を強く進めたのか。その理由としては、蓮舫氏の全国的な知名度による集票力への期待、あるいは低迷する党勢を立て直すためのカンフル剤としての役割などが考えられます。良くも悪くも注目を集める蓮舫氏を擁立することで、参院選全体の話題性を高め、比例区での得票を伸ばしたいという意図があったのかもしれません。
しかし、今回の決定が党内に生んだ軋轢は無視できません。労組系議員からの反発や、幹部が席を立つほどの事態は、党内の結束に影を落とす可能性があります。また、都知事選での「渡り鳥」発言との整合性を巡る批判も、選挙戦に影響を与える要因となり得ます。
結論として、蓮舫氏の参院選比例区からの出馬決定は、立憲民主党にとって大きな賭けと言えるでしょう。彼女の知名度が比例票獲得にどれだけ貢献するのか、そして党内の反発や過去の言動に対する世論の評価がどのように影響するのか、今後の展開が注目されます。
出典:Yahoo!ニュース