6月27日、神奈川県座間市で男女9人を殺害した罪などで死刑が執行された白石隆浩死刑囚。彼の半生を辿ると、その後の凶行につながる「歪み」の兆候は、既に高校時代に現れていた。同級生の証言から、知られざる「白石隆浩」の青春時代に迫る。
平均的な生徒からの変化
彼が進学したのは、神奈川県立商工高校。勉強も運動も平均的で目立たず、1年生の頃は真面目だった。しかし、2年時には週に一度学校を休み、授業中も寝るなど、だるそうな印象に変わった。友人に理由を聞くと、「家を出て一人暮らしをしたいから金を貯めている」と語っていたという。週3〜5日アルバイトに明け暮れ、同時期に両親の別居で家庭が崩壊しており、それが影響した可能性がある。
座間事件で死刑が執行された白石隆浩死刑囚の高校生時代の写真
衝撃的な自殺未遂の告白
友人が衝撃を受けたのは、彼が淡々と話した練炭自殺未遂の経験だ。自殺サイトで知り合った複数人と集まり、寸前までいったものの、参加者の一人が恐怖を感じて中止になったという。思春期特有の誇張もあるかもしれないが、高校生で自殺を試みるというエピソードは、彼の内面の「歪み」を示唆するものとして、その後の姿を想起させる。
座間市で9人が殺害された凄惨な事件の現場となったアパートの一室の写真
死を願う一方で、光の当たる世界へ
意外にも、白石死刑囚は芸能界に興味を持っていた。大手芸能養成学校に通い、長い台詞の練習をするなどしていた。さらに、日テレの連ドラのエキストラに受かり、数千人の中から選ばれたと自慢。後姿が一瞬映った程度だったそうだが、「死にたい」と願いながらも、日の当たる場所に立ちたいという捻じれた二面性が、この頃から垣間見えていた。
北海道一人旅と「異様な性」の萌芽
高2か高3の冬休み明け、2週間ほど学校を休んだ。理由を聞くと、一人で北海道を旅行していたという。公園で野宿し、タクシー運転手に助けられた経験なども話した。さらに、旅行中に知り合った29歳の女性とホテルに行ったと語り、水樹奈々似だとクラスメートに写真を見せて自慢していた。恋愛について彼が語ったのはこの時だけだったという。森鴎外の『ヰタ・セクスアリス』を持ち出すまでもなく、この経験がその後の「異様な性」にどう影響したか、彼の半生において重要な示唆となる。
高校卒業後、ネオン街へ
高校卒業後、彼は大手スーパーに入社し約2年勤めたが自己都合で退職。その後は情報通信系などの職を数カ月ごとに転々とし、パチンコ店でのアルバイトを経て、やがてネオン街へと足を踏み入れていくことになる。
高校時代の白石隆浩死刑囚に見られた、家庭環境悪化に伴う自立への焦燥、孤独と自殺願望、光の世界への憧れと性の関心。これらの異変は、後の事件へ繋がる内面の「歪み」の萌芽だったのかもしれない。同級生の証言は、彼の半生を読み解く上で重要なピースとなる。
参照元
週刊新潮2017年11月16日号、デイリー新潮編集部