日本のMT車は販売比率1%でも健在! 久々の運転で感じた奥深い魅力

日本国内におけるMT車(マニュアルトランスミッション車)の販売比率は現在1%台に過ぎません。しかし、驚くべきことに、乗用車だけで27車種もの日本車にMT設定が存在します。この事実は、日本が今なおMT愛好家にとって「隠れたMT天国」であり続けていることを示唆しています。本記事では、久々にMT車を運転した筆者の体験を通じ、その奥深い魅力に迫ります。

久々のMT運転で痛感した「ヘタさ」

筆者である私は、MT車が主流だった時代に運転を覚えたため、経験は豊富にあるはずでした。しかし、久しぶりにMT車を運転してみて、自分の運転が驚くほどギクシャクしていることに気づきました。特にGR86を借りて走り始めた時は、「同乗者がいなくて本当によかった」と心底思いました。さすがにエンストはしませんでしたが、シフトアップはスムーズさを欠き、シフトダウン時の回転合わせのタイミングも微妙にずれるのです。

GR86が教えてくれた「本格スポーツ」ゆえの難しさ

後で気づいたのは、私が最初に運転したGR86が、久しぶりにMTに乗る者には本格的なスポーツカーすぎたということです。この車のエンジンのレスポンスは非常に鋭いため、回転を正確に合わせるのが難しいのです。今回試乗した他の3台では、GR86ほど神経を使わなくても普通に運転できたことから、いかにGR86の運転が繊細さを要求するかを痛感しました。

日本のMT車4車種(トヨタGR86、他3モデル)の画像日本のMT車4車種(トヨタGR86、他3モデル)の画像

運転の難しさこそMTの「醍醐味」

これは決してGR86への批判ではなく、むしろその逆です。最近のMT車には運転が容易なものも多い中、GR86はドライバーに集中と技術を要求します。同乗者がいれば、ヘタだと思われないよう細心の注意を払うでしょうし、一人でもスムーズな操作ができるかどうかで一喜一憂します。これこそがMT車の最大の魅力、「醍醐味」なのです。経験から言えるのは、GR86は細かいことを気にせずサーキットなどで思い切り走らせる方が、かえってスムーズに運転できる特性があるということです。ゆっくり走らせるのが難しい。この逆説的な性質が、運転をこれほどまでに楽しいものにしています。

この運転の楽しさ、奥深さは、クルマ好き、運転好き、そしてMT好きの方にならきっと理解していただける感覚でしょう。逆にいえば、そうでない方には全く共感されないかもしれません。しかし、誰に迷惑をかけているわけでもありません。「奇特な人もいるものだ」と軽く受け流していただければ幸いです。

[参考文献]

  • 記事ソース: Yahoo!ニュース (ベストカー)
  • 初出: 『ベストカー』2025年6月26日号
  • 著者: 飯干俊作 (ベストカー編集部)
  • 画像提供: 奥隅圭之、日産、トヨタ、マツダ、スズキ