昨今、新卒者の就職活動は早期化が進み、インターンシップの重要性が高まっています。特に2026年度卒の就職活動において、6月1日時点での内定率は83.7%と、前年度と同水準の高い数値を記録しており(キャリタス就活調査より)、一見すると学生にとって有利な「売り手市場」が続いているように見えます。しかし、この高い数字の裏側では、すべての学生が希望通りの進路を手にできているわけではなく、特に「Z世代」と呼ばれる若者たちが抱える独自の悩みや不安が浮き彫りになっています。本稿では、就職活動の現実に直面する彼らの声に迫り、その「光と影」の前編として報告します。
内定状況を「髪色」で察し合う学生たち
都内の中堅私立大学に通う大学4年生、Aさんは、まさに就職活動の渦中にいます。中小企業から1社内定を得たものの、勤務地が希望と異なり、返事を保留しています。一方で、本命の業界・職種では面接になかなか進めず、ため息をつく日々が続いています。そんなAさんの就活における精神的な負担をさらに重くしているのが、周囲の友人たちの「ファッションの変化」だと言います。
「私の大学の友人や知人には、K-POPやVTuberが好きで、ハイトーンやカラフルな『派手髪』の子が多いんです。普段のファッションも個性的で派手な傾向があります。でも、就活が始まると、みんな一斉に髪を黒く染め、ヘアスタイルも『無難』なものに変えるんです。SNSには『就活メイク』や『就活ヘア』といった情報がたくさんあって、みんな同じようなスタイルを目指すようになります。」
就職活動に悩むZ世代の学生たちのイメージ、多様な髪色やファッション
内定後の「反動」と周囲との比較
Aさんは現在、週に一度のゼミで大学に足を運ぶ程度ですが、最近大学に行くたびに、以前のような派手な髪色に戻している学生が増えていることに気づいたと言います。「内定が出たことの反動なのか、急に金髪に染め直す子もいるくらいです(笑)。友人たちはみんな優しくて、私の就活状況を気遣ってか、『内定取れた?』とか『就活終わった?』とは直接は聞いてきません。でも、髪色を見れば、『ああ、この子はもう就活が終わったんだな』というのが自然と分かってしまうんです。」
普段であれば気にも留めない他人の髪色が、自身の就活がうまくいかず精神的に不安定な状況では、非常に気になる存在になる。お互いにファッションや髪色から相手の状況を「察し合う」という、ある種の気まずい状況がキャンパス内に生まれていると、Aさんは語っています。
終わりに
高い内定率という数字の陰で、Z世代の学生たちは、個性の抑制、周囲との比較、そしてSNSによる情報過多といった、現代ならではの複雑な要因から生じる「見えない不安」を抱えながら就職活動を進めています。Aさんのように、数字だけでは見えないリアルな悩みや葛藤は、多くの学生に共通するものなのかもしれません。