参院選の前哨戦とも言われる東京都議会議員選挙。国政の行方を占うとして、地方議会選挙とは思えない高い注目を毎回集めるが、大波乱が起きた。これまで第一党であった自民党が大量に議席を失い、代わりに小池百合子都知事が特別顧問をつとめる都民ファーストの会が第一党を奪還した。一方で、自民党からは”裏金問題”で公認を得られず、無所属として出馬し当選し他議員について、自民党は選挙後追加公認し、波紋を呼んだ。立憲民主党の小沢一郎氏も次の参院選で自民党は「吹き飛ぶ可能性もある」と指摘し、追加公認を受けた議員がXで説明しても「騙された」といったリプライがついた。経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏が解説するーー。
自民党が組織的に実行した卑劣な選挙手法
6月22日投開票の東京都議会議員選挙で、自由民主党は歴史的な大敗を喫した。選挙前の30議席から21議席へと激減し、過去最低の議席数に沈んだ。小池百合子都知事が特別顧問を務める都民ファーストの会に都議会第一党の座を明け渡す屈辱的な結果となった。
自民党の凋落は、国民の怒りと不信が頂点に達している現実を冷徹に映し出している。今回、さらに開票後に、有権者の激しい怒りを買ったのは、自民党が組織的に実行した卑劣な選挙手法、いわゆる「ステルス当選」問題である。
党の政治資金規正法違反問題、通称裏金事件で批判を浴びた候補者や、党公認では当選が危ぶまれる候補者を、あえて無所属で出馬させた。当選が確定した途端、自民党は即座に追加公認を発表した。目黒区の青木英太議員をはじめとする複数の当選者は、開票日の深夜に追加公認を受け入れた。青木議員は自身のSNSで「当初から自民党公認を目指していた」「決して意図して隠していたわけではない」と弁明した。有権者からは「騙された」「自民党と知っていれば投票しなかった」という怒りの声が噴出している。選挙公報やポスターに自民党籍を明記せず、無所属を装って有権者の審判を仰ぐ行為は、明白な詐欺行為に等しい。
自民党という看板を掲げれば勝てないという自己認識があったとすれば、姑息な戦術である。有権者の信託を裏切り、議席数という結果だけを追い求める姿勢は、民主主義の根幹を揺るがす冒涜行為である。