イスラエル紙ハーレツは27日、パレスチナ自治区ガザ地区の支援物資配布拠点を警備していたイスラエル軍兵士らが「脅威がないにもかかわらず、民間人を故意に銃撃するように命令された」と証言したと報じた。イスラエル軍はこれまで「脅威を感じたため警告射撃を行った」などと説明していたが、報道が事実であれば、説明の信ぴょう性が揺らぐ可能性がある。
イスラエルと米国が後押しする「ガザ人道財団」(GHF)の配布拠点では、軍による発砲で住民の犠牲が相次いでいる。ガザ当局によると、GHFが活動を開始した5月下旬以降、食料を求めて殺害された住民は500人以上に上る。イスラエル軍の法務官は、戦争犯罪の疑いがあるとして調査を指示した。
ある兵士は「近い場所から群衆に銃撃したこともあった。脅威を感じたことはなく、彼らは武器を持っておらず、反撃されることもなかった」と証言。別の兵士は、警告射撃の後に逃げ惑うガザ住民を撃つよう命じられたとし、「なぜ逃げている人を撃たなければいけないのか」と疑問を呈した。
GHFは、イスラム組織ハマスに支援物資が渡るのを防ぐためとして、イスラエルと米国の主導で設立された。ただ、200万人以上が暮らすガザ地区に配布拠点は4カ所しかなく、多くの住民が殺到して混乱が続いている。拠点の多くが南部に偏在していることも、住民の強制移住を助長しているとして国際社会から批判を浴びている。
イスラエル軍は「民間人への意図的な発砲は確認されていない」として報道を否定。ネタニヤフ首相とカッツ国防相も共同声明で「世界で最も道徳的な軍であるイスラエル軍の名誉を傷つけるための、悪意ある虚偽報道だ」と非難した。【エルサレム松岡大地】