車のメンテナンスの中でも、多くのドライバーが関心を寄せ、一方で情報が錯綜しがちなのがエンジンオイルの交換です。カー用品店やガソリンスタンド、はたまた熱心なカーマニアまで、それぞれの立場からの推奨やこだわりがあり、ユーザーはどの情報に従うべきか迷ってしまうことも少なくありません。特に、「5000kmごとの交換が当たり前」というかつての常識が根強く残る中、現代の車とエンジンオイルの進化は、その考え方を大きく塗り替えています。では、一体何が「正解」なのでしょうか。
オイル交換時期、メーカー推奨が最も信頼できる理由
エンジンオイル交換のタイミングに関して、最も信頼できる基準は、自動車メーカーがそれぞれの車種に対して指定している「純正指定オイル」と「推奨交換時期」です。多くの国産ガソリン車では、現在、走行距離1万5000km毎または1年毎の交換が標準的な推奨サイクルとなっています(ただし、過酷な使用条件であるシビアコンディションの場合はその半分が目安です)。さらに、アウディなどの一部欧州車では、最長2年または3万kmといった非常に長いサイクルが設定されているケースもあります。
かつての「5000km毎交換」という感覚からすると、この長いサイクルに不安を感じる方もいるかもしれません。しかし、現代のエンジンとエンジンオイルは、このメーカー推奨サイクルで問題なく性能を維持できるよう設計されているのです。
最新エンジンオイルの驚くべき長寿命性能
現代において、エンジンオイルには燃費向上や排出ガス浄化といった環境性能の要求が高まっています。これに伴い、エンジンオイル自身の「劣化防止性能」が飛躍的に向上しました。交換サイクルが短いと廃油が増え、環境負荷となるため、オイルの長寿命化は重要な開発課題なのです。
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エンジンルームと最新のエンジンオイル、推奨される交換時期についてのイメージ](https://news.yahoo.co.jp/articles/592a5cbf68f7ce1121bfdf4f2e70d32333f03926/images/000)
エンジンオイルの品質基準を示すAPI規格を見ても、その進化は明らかです。2001年のSL、2004年のSM、2010年のSN、そして2020年の最新規格であるSPと、更新されるたびに省燃費性を含む総合性能、そして「性能持続性」の基準が引き上げられています。例えば、SM規格はSL規格と比較して2倍の性能持続性が求められており、最新のSP規格オイルは、ひと昔前のオイルと比べて3倍以上のロングライフ性能を持っていると考えられます。この技術的な進化こそが、メーカーが長い交換サイクルを設定できる根拠です。
過度なオイル交換がもたらす意外な落とし穴
「メーカー指定より早めに交換すれば、より安心なのでは?」と考える方もいるでしょう。しかし、最新の車に関しては、必ずしもそうとは言えません。現代のエンジンは非常に精密に作られており、「ノーメンテナンス」に近い状態での長期使用を前提として設計されています。
そのため、頻繁にエンジンルームを触ったり、オイル交換や点検の際に微細な埃やゴミが混入したりすることが、かえって精密なエンジン内部にダメージを与えるリスクとなりうるのです。最近の車にエンジンカバーが多く採用されているのは、静粛性向上のためだけでなく、不用意にエンジンルームに触れてほしくないというメーカーからのメッセージとも受け取れます。また、一部の高級車などでオイルレベルゲージ(油量を確認する棒)が廃止され、センサーによる精密なモニタリングに置き換わっているのも、外部からの異物混入リスクを排除するための対策と言えます。これらの車では、センサーがオイルの状態を正確に判断し、交換時期をメッセージとして通知してくれるため、その指示に従うのが最も合理的かつ安全な方法です。
まとめ:迷ったらメーカー指定に従うのが賢明
結論として、エンジンオイル交換の最適なタイミングは、自動車メーカーがその車種のマニュアルで指定している推奨サイクルに従うことです。現代のエンジンとオイルは、そのサイクルで十分な性能を発揮し、エンジンの保護を可能にしています。カー用品店やガソリンスタンドで頻繁な交換を勧められて不安になる方もいるかもしれませんが、メーカー推奨の根拠を知っていれば、必要以上の交換を避けることができます。もちろん、ご自身でお気に入りのオイルがあり、信頼できるショップで独自のサイクルで交換したいという場合は、それを優先しても構いません。しかし、「何が正しいのか分からない」と迷っているならば、まずはメーカーが示す基準に沿うのが、費用対効果、環境負荷、そしてエンジンの健康にとって最も賢明な選択と言えるでしょう。
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