「ひきこもり」長期化・高齢化の親たちへ 理事長が語る「つながり」の重要性

「大人のひきこもり」が長期化・高齢化するにつれて、ケアラーである親の心労は増大しています。全国約40の家族会で構成されるNPO法人「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」(東京)理事長の佐々木善仁さん(75)は、「ひとりで悩まず、つながること」の重要性を強く訴えています。家族会は、ひきこもりの子どもを持つ親などが、同じ悩みを持つ者同士で語り合い、経験や情報を共有し、心の支え合える大切な場所となっています。また、当事者にとっての「居場所」としての機能も担っています。各家族会によって活動内容は様々ですが、定期的に集まって近況を報告したり、ひきこもり経験者などを招いて学習会を開いたりする活動が行われています。

NPO法人KHJ全国ひきこもり家族会連合会理事長 佐々木善仁氏の顔写真NPO法人KHJ全国ひきこもり家族会連合会理事長 佐々木善仁氏の顔写真

高齢化する親と社会支援の課題

近年、家族会に参加する中心層である親の高齢化が著しく進んでいます。病気や自身の老いへの不安を抱えながら、一方で子どもと向き合い、日々の生活をこなすことで精一杯という家族も少なくありません。佐々木さん自身も会員になって8年になり、多くの当事者やその家族と話す中で感じるのは、ひきこもりに対する社会全体の理解の乏しさです。

行政などの相談支援機関に相談に行っても、担当者から「本人を連れてきてください」と言われたり、担当者の異動が多くて情報が十分に引き継がれなかったりすることが頻繁にあります。ひきこもっている本人やその家族は、社会とつながりたいと望んで勇気を出し一歩を踏み出しているにもかかわらず、このような配慮の欠如がその歩みを阻んでしまうのです。その結果、期待を裏切られ、公的な支援を受けることを諦めてしまうケースが少なくないのが現状です。

家族会と公的支援に求められること

家族会は、様々な体験談を聞くことで学びを得られる貴重な場ですが、残念ながら、専門的な助言を与えたり、福祉や医療といった専門機関につないだりして問題解決を図る場ではありません。このため、行政などの公的な支援機関に対しては、もっと気軽に相談しやすい体制づくりをお願いしたいと佐々木さんは訴えます。一方的な価値観を押しつけるのではなく、一人ひとりの異なる状況に寄り添った、個別対応型の支援が受けられるようになることが切に望まれています。

東日本大震災での悲劇と「つながる」ことの教訓

佐々木さんの自宅は岩手県陸前高田市にあります。2011年の東日本大震災で、当時50代後半だった妻と20代後半だった次男を失いました。中学時代からひきこもり状態だった次男は、津波が迫る中でも部屋から出ることを強く拒みました。避難を必死に説得し続けた妻と共に、次男は津波に流されてしまったのです。佐々木さんは、命の危険が目前に迫ってもなお、外に出られないほどの何かを次男が心の中に抱え込み、苦しんでいたことに、当時は気づくことができませんでした。

この壮絶な経験から、佐々木さんは改めて「つながること」の重要性を痛感しています。話すこと、そして相手の話を真摯に聞くことによって、問題解決の知恵を得たり、困難に立ち向かう勇気を得たりすることができるはずです。もし、ひきこもりの家族がいて、誰にも悩みを打ち明けることができずに苦しんでいるのであれば、勇気を出して家族会の扉をたたいてみてほしいと、佐々木さんは切に呼びかけています。孤立せず、同じ経験を持つ仲間と「つながる」ことが、未来への一歩となる可能性があるのです。

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