日本のキャッシュレス決済で「デビットカード」が伏兵に、若年層が利用拡大を牽引

日本のキャッシュレス決済比率は、2024年に42.8%(141.0兆円)に達し、政府が目標としていた「2025年までに4割程度」を前倒しで達成しました。経済産業省のデータによると、決済手段別の割合ではクレジットカードが依然としてトップを占める一方、近年急速に存在感を増しているのがコード決済です。しかし、このキャッシュレス化の波の中で、意外な「伏兵」として注目を集めているのがデビットカードです。

キャッシュレス決済比率の現状とデビットカードの伸び

経済産業省の2017年からの推移を見ると、クレジットカードは安定したシェアを維持し、登場時にはほぼゼロだったコード決済が現在では1割近くまで拡大しています。一方で、かつては電子マネーが8%のシェアを占めていましたが、2024年には4.4%と半減しています。これに対し、デビットカードは2017年の1.7%から2024年には3.1%へと倍近くに伸びており、シェアは小さいながらも2017年以降一度も減少することなく右肩上がりを続けているのが特徴です。

他調査でも確認されるデビットカードの利用拡大

決済系フィンテック企業インフキュリオンが2015年から継続している「決済動向調査」でも、同様の傾向が確認されています。特に国際ブランド付きデビットカードの利用率は顕著な伸びを示しており、2024年には18%程度だったものが29%まで急伸したと報告されています。この急伸には、調査対象にゆうちょ銀行のデビットカードを含めたことも影響していますが、それを含めない場合でも25%と高い伸び率を示しています。

多様なキャッシュレス決済方法のイメージ、特に利用が拡大しているデビットカードを示す図多様なキャッシュレス決済方法のイメージ、特に利用が拡大しているデビットカードを示す図

デビットカードとは?主要な発行銀行

デビットカードは銀行が発行する決済カードで、多くの場合キャッシュカードと一体型になっています(モバイルアプリ専用の形態もあります)。利用すると紐づけられた銀行口座から即時に利用金額が引き落とされるため、自身の銀行口座残高の範囲内で利用できるのが特徴です。インフキュリオンの調査によると、利用されているデビットカードの発行銀行は、ゆうちょ銀行が最も多く、次いで楽天銀行、PayPay銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行などが続きます。

特徴的な利用者層:利用率トップは20代

クレジットカードの利用率が年齢層が上がるにつれて高くなる傾向があるのに対し、デビットカードは対照的な利用者層を持っています。インフキュリオンの調査では、デビットカードの利用率が最も高いのは20〜29歳の若年層となっています。これは、新社会人となり自分名義の給与口座を開設し、それに紐づくデビットカードを利用し始めることと関連があると考えられます。口座残高を意識しながら支出を管理したいという若年層のニーズにも合致していると言えるでしょう。

まとめ

日本のキャッシュレス決済は着実に拡大し、政府目標を前倒しで達成しました。その中で、クレジットカードやコード決済の陰に隠れがちだったデビットカードが、着実に利用率を伸ばし「伏兵」としての存在感を示しています。特に20代を中心とした若年層に支持されている点が特徴的であり、今後のキャッシュレス市場におけるデビットカードの動向が注目されます。

出典:Yahoo!ニュース / 東洋経済オンライン