日米間の関税交渉が難航する中、アメリカのトランプ大統領が日本に対し「30%か35%の関税」を課す可能性に言及しました。これは、まもなく訪れる一時停止期限(7月9日)を前に、日本側にとって極めて厳しい状況を示唆しています。
「相互関税」の背景と一時停止
アメリカのトランプ大統領は今年4月、「相互関税」という新たな貿易政策を正式に発表しました。これは、貿易相手国がアメリカ製品にかける関税と同水準の関税を、アメリカもその相手国製品にかけるというものです。この方針に基づき、日本に対しては当初24%の関税を課すことが表明されました。
しかし、「相互関税」の発動からわずか13時間後には、トランプ大統領自身が一時停止を発表しました。大統領は「みんな少し神経質になりすぎだ。怖がりすぎだ」と述べ、一部の相互関税について90日間の一時停止を認めるとしました。現在、日本からの輸入品には一律10%の関税が課されていますが、この一時停止措置の期限が7月9日に迫っています。
繰り返された交渉と進展なき現実
この期限が迫る中、日本側は赤沢経済再生担当大臣(当時)を団長とする交渉団を繰り返しアメリカに派遣し、関税撤廃や引き下げを求めて交渉を重ねてきました。赤沢大臣はこれまでに計7回訪米しています。
最初の本格的な関税交渉は4月。この時は、当初予定されていなかったトランプ大統領が急遽会談に同席し、自身のSNSで「大変光栄であり、大きな進展があった」と強調、日米関係の良好さをアピールしました。
続く5月の交渉後、赤沢大臣は「非常に突っ込んだ話ができた」「首脳間で6月に合意できる段階に入れれば」と前向きな見通しを示しました。
6月、5回目の訪米の際には、ラトニック商務長官(当時)とファーストネームで呼び合う関係性をアピールするなど、交渉以外の面でも関係構築を図りました。しかし、交渉そのものについては「一致点を見出せたかと言えば見出せていません」と述べ、依然大きな隔たりがあることを認めました。
直近の7回目の訪米では、商務長官との会談は実現したものの、財務長官との会談は日程調整がつかず断念。滞在を延長してでも会談を目指しましたが叶わず、合意なく帰国せざるを得ませんでした。赤沢大臣は8回目の訪米も検討していると報じられています。
厳しい表情で日米関税交渉の進め方を批判する日本商工会議所の小林会頭こうした交渉の背景には、トランプ大統領がアメリカ産コメや自動車の対日輸出が進まないことに強い不満を抱いているという事情があります。今回の高関税示唆も、この不満の表れと見られています。
日米間の関税交渉は、日本側の粘り強い働きかけにもかかわらず、依然として大きな隔たりが解消されていません。トランプ大統領による30%、あるいは35%という具体的な高関税の可能性示唆は、期限が目前に迫る中で日本が極めて難しい対応を迫られている現状を浮き彫りにしています。7月9日の期限に向けて、予断を許さない状況が続いています。