夏の参院選兵庫選挙区、注目の泉房穂氏と立花孝志氏が激突か

夏の参院選は、政権選択がかかり公示初日から全国で熱気を帯びている。中でも、ひときわ波乱含みの様相を呈しているのが兵庫県選挙区だ。昨秋の知事選で斎藤元彦氏の逆転勝利を牽引したNHK党の立花孝志氏が今回、兵庫選挙区から出馬。対立候補である無所属の泉房穂氏に対し、泉氏の街頭演説後、同じ場所で演説を行うと表明した。これを受けて泉氏は街宣日程の公開を避け、立花氏の動向を牽制している。斎藤知事を勝利に導いた「2馬力選挙」の手法を再び用い、今回は他候補への批判を展開する立花氏の戦略は、どのような結果をもたらすのだろうか。

夏の参院選兵庫選挙区、泉房穂氏と立花孝志氏など候補者の動き夏の参院選兵庫選挙区、泉房穂氏と立花孝志氏など候補者の動き

過去のパワハラ騒動や知事選での影響も:兵庫選挙区の複雑な構図

今回の参院選兵庫選挙区は、改選数3に対して13人が立候補している。7月3日の告示日には、石破茂首相が神戸入りして第一声を上げたほか、4日には国民民主党の玉木雄一郎代表や参政党の神谷宗幣代表が姫路を訪れるなど、各党の主戦場となっている。

地元記者は「前回の参院選では維新、公明、自民が議席を獲得しました。今回は有力政党がこぞって候補者を擁立したため、当選ラインが低下し、情勢は混沌としています。その中で、明石市長を12年間務め、子ども・子育て政策などが高く評価され、テレビ露出も多い泉氏は、知名度で他の候補者を一歩リードしています」と現状を分析する。

しかし、泉氏には過去に民間建物の立ち退き交渉を巡り、職員に対し「火ィつけてこい。火つけて捕まってこい」と発言するなど、パワハラと受け取られる音声が暴露された経緯がある。この問題を受け、泉氏は2022年に市議会で問責決議が可決されると、任期満了後の政界引退を示唆していた。

県議会関係者は「昨年の斎藤知事に対する県議会の不信任決議とその後の出直し知事選の過程で、当初は対立候補として泉氏の名前が取り沙汰されたり、不信任決議案提出を煽るようなSNS投稿をしたりと、政局に深く関与している印象でした。その後、今年3月に参院選への出馬を表明すると、間もなく立憲民主党の推薦を取り付けました」と、泉氏の動向について語る。

一方、立花孝志氏は昨年11月の兵庫県知事選に「当選するつもりはなく、斎藤知事を応援する」という目的で出馬した。彼は演説で、県議会の調査特別委員会(百条委)や県の第三者委員会が認定した斎藤知事のパワハラ疑惑などを「全て嘘で、斎藤さんは嵌められた」と主張した。

社会部記者は「立花氏は知事選期間中、斎藤知事の演説直後に同じ場所で演説を繰り返し行い、疑惑を提起した元県幹部や、百条委で調査を行った県議らを批判しました。その演説動画がSNSで広く拡散し、これが当初劣勢だった斎藤知事が再選を果たす上で大きな力となったと見られています。しかし、当選を目的とせず立候補し、選挙運動を借りて他候補を応援するこの『2馬力』と呼ばれる手法は、選挙の公正性を揺るがすものとして大きな問題となりました」と指摘する。

今回の参院選で、立花氏が本気で当選を目指しているのかどうかについては、地元記者は「今回の選挙では、立花氏は当選を真剣に目指しているようです。そのために、『自分が最も斎藤知事を応援しており、既存政党は知事を敵視している』という構図を有権者に訴えかけています」と述べる。

実際、立花氏は3日の第一声で、「今回の兵庫県のこの選挙、これは斎藤さんを守る(選挙だ)。それこそ私以外の人、みんな斎藤さんの足引っ張ってんだ、自民党も立憲民主党も公明党も国民民主党も」と強く主張した。これは、出直し知事選で111万票を獲得した斎藤知事の支持票を引きつけたいという計算があるものと推測される。

参院選兵庫選挙区告示日の候補者、泉房穂氏の離島での第一声と立花孝志氏の第一声参院選兵庫選挙区告示日の候補者、泉房穂氏の離島での第一声と立花孝志氏の第一声

激戦区・兵庫選挙区の今後の焦点

このように、過去の出来事や複雑な人間関係が絡み合う兵庫選挙区は、今回の参院選でも全国屈指の注目選挙区となっている。高い知名度を持つ泉氏と、独自の選挙戦略で前回知事選を動かした立花氏の動向が、今後の選挙戦の大きな鍵を握るのは間違いない。有力政党が候補者を擁立する中で、この二人の候補者がどのような戦いを展開するのか、そしてその結果が議席の行方にどう影響するのか、今後の選挙戦から目が離せない。


参考文献