静岡県伊東市の田久保眞紀市長(55)に持ち上がった学歴詐称疑惑を巡り、新たな展開がありました。2日の記者会見で田久保市長は、これまで「東洋大学を卒業した」と説明してきましたが、実際には大学から「除籍」されていたことを認めました。この告白は波紋を広げており、市議会からは強い反発が出ています。
学歴詐称疑惑について説明する伊東市の田久保眞紀市長
疑惑の発端と市長の釈明
当初、市議会議員全員に対し、田久保市長が「東洋大学を卒業しておらず除籍だった」と主張する匿名文書(怪文書)が送付されました。これに対し田久保市長は当初、「怪文書の要求には一切応じない」と強く批判していました。しかし、自ら東洋大学に確認のために出向き、卒業証明書を申請した結果、卒業ではなく「除籍」となっていたことが明らかになったといいます。会見で除籍の具体的な経緯について問われた市長は、「確認中」と述べるにとどめました。市長は自身の認識について、「非常に恥ずかしい言い方になりますけども、勘違いをしていたんだろうと言われると、全く否定できない」と釈明し、「一度卒業という扱いになって、今どうして除籍になっているのかについては、確認ができ次第、示していくしかない」と述べました。
大学側の見解
この点について、番組が東洋大学に直接確認したところ、「卒業後に除籍になることはない」と回答が得られました。また、大学で除籍が決定した際には、通常、学生の保証人にその旨を通知することになっているとも説明しています。これは、市長が卒業後に除籍になったという説明や、除籍の通知を知らなかった可能性を示唆する発言とは矛盾する見解です。
市議が見た「卒業証明」とその真偽
騒動が表面化した後、田久保市長は伊東市議会の議長と副議長に対し、「卒業を証明するもの」を見せたとされています。これについて、「サン!シャイン」の取材に対し、市議会の青木敬博副議長と中島弘道議長が当時の状況を語りました。青木副議長によると、市長は議長と副議長が向かい合って座っているテーブル越しに歩いてきて、「卒業アルバムと卒業証書です」と言って書類をパッと開いて見せ、議員が確認しようと身を乗り出すとすぐに閉じて下げたといいます。その時間について副議長は「1秒ぐらいじゃないですかね。…1秒あるかな」と振り返りました。一度目はほとんど見えず、二度目に見せてもらった際もわずかな時間だったとのことです。
その時点では本物の卒業証書だと思ったという二人でしたが、その後、田久保市長が卒業したとされる年の東洋大学の別の学科の卒業証書と比較したところ、違和感を覚えたといいます。青木副議長は、「自分の記憶では、(市長が見せてくれた卒業証書は紙が)右側についていたんで、違うと思っています。デザインも全然違っていた」と述べ、一般的な卒業証書にある「卒業証書・学位・名前・生年月日」といった形式ではなく、本文の中にこれらの情報が入っているような感じだったと証言しました。現在の認識として、副議長は「偽物です」と断言し、「とにかく嘘の連続だなと今回の件は思っていまして…、色んな嘘が積み重なっていると感じています」と述べました。中島議長も同様に、「偽物以外、何ものでもないと思いますね」と述べています。
市議会の反応と今後の動き
市議会では、田久保市長の学歴問題を「嘘の連続」と捉える見方が強まっています。今後、一部の市議は7日の本会議で、田久保市長に対する「辞職勧告決議案」を提出する方針を固めています。さらに、地方自治法に基づく強い調査権を持つ「百条委員会」の設置も検討しており、真相究明に向けた動きを本格化させる構えです。
市長の「百条委員会」阻止の試み
こうした市議会の動きに対し、田久保市長は3日に市議会の応接室を訪れ、中島議長らと面会しました。中島議長によると、市長はその席で「百条委員会を開くのは止めてほしい」と要請してきたといいます。市長は百条委員会について「余計に市を混乱させる」と主張した模様です。これに対し中島議長は、仮に市長が即日辞職するというのであれば、百条委員会を開かないことも検討できると伝えたものの、市長が「私が結局、辞めたとしても(百条委員会が)開かれるかもしれないし…」と述べたため、議長は「それじゃあ、信用できないというなら話はこれで終わりです」として、議論は物別れに終わったとのことです。市長は辞職には言及せず、百条委員会設置阻止の意向を示しましたが、市議会側の硬い姿勢に直面しています。
伊東市長の学歴を巡る問題は、「卒業」ではなく「除籍」だったという市長自身の告白、そして示されたとされる「卒業証明」への市議会側の疑念により、さらに複雑化しています。大学側の見解とも食い違う点があり、疑惑は深まる一方です。市議会は辞職勧告決議案提出の構えを見せており、百条委員会設置の可能性も示唆するなど、田久保市長への追及姿勢を強めています。今後の議会の動向と市長の対応が注目されます。