韓国の消費クーポン支給開始へ期待と懸念 – 国民・自営業者の本音

韓国政府は先日、高物価と景気低迷に対応するため、国民生活を支援し内需を喚起する「民生回復消費クーポン」の第1次支給計画を発表しました。この政策は7月21日から本格的に開始されますが、現場からは期待と同時に、国の財政悪化を懸念する声も聞かれ、複雑な心理が広がっています。

ソウル市内の伝統市場を訪れた市民が消費クーポンへの期待と懸念を語る様子ソウル市内の伝統市場を訪れた市民が消費クーポンへの期待と懸念を語る様子

支給計画の詳細と期待される効果

民生回復消費クーポンの第1次支給は、7月21日から9月12日までの8週間にわたり行われます。このクーポンは、追加補正予算によって支えられており、内需の短期的な振興を目指しています。支給は第1次(全国民対象)と第2次(国民の90%対象)に分かれています。合計支給額は、所得上位10%に15万ウォン、一般国民に25万ウォン、低所得・ひとり親家庭に40万ウォン、生活保護受給者には50万ウォンと、所得階層に応じて異なります。さらに、非首都圏地域では1人当たり3万ウォン、農漁村人口減少地域では5万ウォンが追加されます。李在明大統領は、特に小規模事業者や地域経済、そして所得再分配において効果が期待できると述べていますが、同時に財政状況の厳しさから追加支援には慎重な姿勢を示しています。国会では、この消費クーポン予算として12兆1709億ウォンが編成されました。

利用方法と制限

消費クーポンは、クレジットカードやチェックカード、プリペイドカード、地域商品券の中から希望する形態で受け取ることができます。使用できるのは、住民登録上の居住地を管轄する自治体内の小規模店舗です。具体的には、コンビニエンスストア、飲食店、美容室、学習塾、伝統市場などが挙げられます。一方で、大型マートや百貨店、免税店、デリバリーアプリ、そして年間売上30億ウォン以上の大規模事業所では使用できません。これは、中小零細事業者の支援に重点を置くためです。内需を早期に活性化させるという趣旨に基づき、使用期限は11月30日までと定められています。期限内に使用されなかった残高は、国と自治体に返還されることになります。

現場の声:期待と財政への懸念

今回の消費クーポン支給計画に対し、経済活動の現場からは様々な声が聞かれます。ソウル市内の伝統市場でもち店を営む経営者は、32度の猛暑の中でも客足が伸び悩む中、消費クーポンによって少しでも売上が回復することに期待を寄せています。また、大学生からは学費や歯科治療費、眼鏡店の店長からは生活必需品ではない眼鏡の購入を後押しする効果に期待する声が上がっています。これらの人々にとって、クーポンは経済的な負担を軽減する助けとなります。

しかし、財政悪化への懸念も根強く存在します。同じく伝統市場で長年果物店を営む経営者は、「私たちの売上は少し増えるだろうが、結局国の借金が増えるだけではないか」と心配しています。大企業に勤める別の会社員も、「正直なところ、15万~25万ウォンはあってもなくてもいい金額だが、もらえるものはもらう。しかし、将来的な増税につながるのではないかと気がかりだ」と本音を漏らしました。このように、国民や自営業者の間では、短期的な恩恵への期待と、長期的な財政への不安が入り混じった複雑な心理状態が見られます。

まとめ

民生回復消費クーポンは、景気低迷と高物価に苦しむ韓国の国民生活支援と内需刺激を目的とした重要な政策です。7月21日の支給開始を控え、特に小規模事業者や経済的困難を抱える層からは、生活や事業の助けとなることへの期待が高まっています。一方で、12兆ウォンを超える追加補正予算が国の財政に与える影響を懸念する声も多く、国民の間には複雑な反応が見られます。このクーポンが短期間での内需押し上げにどの程度貢献できるか、そしてその財政的負担をいかに管理していくかが、今後の韓国経済における重要な課題となります。

参考資料

Yahoo!ニュース (聯合ニュース配信)