歴史的な船出を切った高市早苗内閣は、発足直後の世論調査で驚異的な82%という高い支持率を記録し、21世紀に入って小泉純一郎内閣に次ぐ2番目の高水準となりました。初の女性首相としての新鮮さ、明確な物言いが石破茂前首相との対比で国民に受け入れられ、赤字国債発行による積極的な財政出動の姿勢が株式市場に期待感をもたらしています。日経平均株価はバブル期の最高値を大幅に上回る5万円前後で推移し、景気回復への国民の期待が高まっているのは明らかです。
しかし、前途洋々に見えた高市政権は、初の国会審議で早くも大きな嵐に見舞われました。特に物価高対策に関する11月7日の予算委員会では、野党からの集中砲火を浴びることに。中でも、「2年間の飲食料品消費税0%」の法制化について、高市首相が慎重な姿勢を見せたことは大きな波紋を広げました。かつて高市氏自身が石破前首相に対し、「国の品格として食料品の消費税率は0%にすべき」と強く批判していた経緯があるだけに、この突然の「手のひら返し」には質疑が紛糾しました。
予算委員会で財務相と話す高市首相、疲労から目を閉じる場面も
高市首相は答弁で「レジ」という言葉を5回も繰り返し、レジの税率変更には1年かかると主張しました。これは石破氏と全く同じ答弁であり、問題の先送りに使われる「常套句」だと指摘されています。ある野党ベテラン秘書は、食料品の消費税減税が石破政権時代から公明党対策として検討されていた背景に触れ、連立解消後の高市首相が公明党よりも財務省と関係の深い麻生太郎副総裁を敵に回すことを恐れ、巧みにスタンスを変えたと分析しています。この時期には「午前3時出勤」が話題となりましたが、閣僚や官邸スタッフを準備に付き合わせておきながら、委員会では常套句で逃げたのでは周囲も浮かばれないだろうとの声も聞かれます。
物価高のもう一つの主要因である円安にも歯止めがかかっていません。総裁選前は1ドル147円台だったものの、11月12日現在では154円台へと、約3週間で7円も円安が進行しました。日本銀行は円安を是正するために利上げを望んでいますが、政府は好調な株価に水を差しかねないとしてこれを容認していません。さらに、円安対策が不十分なまま、トランプ大統領の圧力に屈して防衛費を対GDP比2%まで引き上げることを約束してしまい、今後大量のアメリカ製兵器を購入することになります。
高市首相は、野党が提案するガソリン・軽油の暫定税率廃止に合意し、日本維新の会が主張する高校無償化も受け入れる姿勢を見せています。しかし、その財源については明確な説明がなく、このまま無策で「バラマキ」を続ければ、2022年に減税政策を強行してポンドの暴落を招き、わずか49日で辞任に追い込まれたイギリスのリズ・トラス元首相の二の舞になりかねないと政治ジャーナリストの角谷浩一氏は警鐘を鳴らしています。
高市政権を支えるべき自民党内でも、「支持率バブル」の崩壊に備える動きが早くも現れています。予算委員会前日の11月6日には、『年末年始の解散/総選挙及び予算案成立及び衆議院定数削減事例』と題された怪文書が永田町に出回り、過去の解散総選挙の成功例が記されていました。ある自民党中堅議員は、高市政権のほころびが早期に露呈し始めたことを踏まえ、来年1月の通常国会はさらに荒波に見舞われると予測。「今が支持率のピークであることは明白であり、『高市フィーバー』が終わる前に、来年早々にも解散総選挙に踏み切って議席数を回復すべきだと考える議員は少なくない。怪文書はそのための説得材料だろう」と述べました。一方で、高市首相が耳を傾けないことに対し、「まだ何も成し遂げていないのに支持が集まっているのは、実力ではなく期待感によるものだと気づいてほしい」と苦言を呈しています。
足元の自民党からの支持も揺らぎ始めた高市政権。座礁を避けるためには、首相が強いリーダーシップを発揮し、早期に具体的な結果を出すことが求められています。





