セパン・インターナショナル・サーキットで行われたスーパーGT第3戦は、GT300クラスでトップを快走していた車両に予期せぬピットトラブルが発生し、レース結果に大きな影響を与えました。これは、今シーズン唯一の海外戦として注目を集めたレースでの、最も記憶に残る出来事の一つです。
12年ぶりのセパン戦、GT300の熱戦
2013年以来、実に12年ぶりに開催されたスーパーGT第3戦セパンは、各クラスで激しい戦いが繰り広げられました。特にGT300クラスでは、開幕から好調なチームに加え、セパンを得意とするチームが優勝争いに絡むと予想されていました。その中で、抜群の加速力とレースペースで序盤からトップを牽引する車両が現れました。
予期せぬ悲劇:ホイールナットの転倒
その中心にいたのは、Green Braveの52号車 GR Supra GTです。レースの折り返し地点を過ぎた28周目、トップを走行していた52号車がルーティンのピットインを行います。しかし、タイヤ交換作業中に、まさかのアクシデントが発生しました。左リアタイヤの交換時、ホイールナット(ロックナット)が適切に装着されず、ピットエリア後方に勢いよく転がってしまったのです。
ピットクルーはすぐにナットを追いかけましたが、勢いのついたナットはなんと隣のピットエリアまで転がってしまいました。この予想外の事態に、クルーはナットの捜索と回収に全力を尽くしました。その間、ピット作業はストップし、時間は刻々と過ぎていきました。実況を担当していたサッシャ氏も、「これは何待ち?」「これは長いですね……」と困惑するほど、異例の大幅遅延となりました。
スーパーGT第3戦セパン、#52 GRスープラのピットストップ作業中の様子
痛恨のタイムロスと順位の変動
結局、このホイールナットの回収と再装着に時間を要し、52号車のピットストップには驚愕の54.0秒を記録しました。これは通常のピットストップタイムを遥かに超えるものです。
なんとかピット作業を終えコースに復帰した52号車でしたが、この痛恨のタイムロスが響きました。翌周にピットインしたライバル車両であるUPGARAGEの18号車 AMG GT3は、通常のピット作業を終え、52号車に対して大きなアドバンテージを持ってコースに戻ってきました。これにより、トップの座は18号車に明け渡され、52号車は大きく順位を落とすこととなりました。ライバルチームが見事なオーバーカットを成功させた形です。
ファンの無念と共感の声
この結果に対し、SNS上では多くのスーパーGTファンから無念の声が寄せられました。トップを快走し、優勝の可能性を強く感じさせていただけに、「圧勝を予感していたのに」「あと一歩届かず」「レースラップは一番速かった」「ピットがもったいなかった」といった、悲劇に見舞われたチームとドライバーに対する同情や、惜しむ声が相次ぎました。
まとめ
スーパーGT第3戦セパンにおけるGreen Brave 52号車 GR Supra GTに発生したピットトラブルは、レースの展開を大きく左右する決定的な瞬間となりました。ホイールナットという小さな部品の予期せぬ動きが、トップ走行車両に54秒ものタイムロスを与え、優勝争いから脱落させる結果となりました。この出来事は、レースにおけるピットワークの重要性と、ほんの些細なミスが大きな結果に繋がりうることを改めて示すものでした。