消防団報酬「上納」の実態、是正通知後も続く問題

地域防災を担う消防団において、団員が自治体から支給される報酬を受け取れず、団側に「上納」させられる問題が後を絶たない。総務省消防庁が3年前に是正通知を出した後も、一部の消防団で改善されていない実態が複数の団員の証言から明らかになった。

消防団報酬の仕組みと是正通知

消防団員は非常勤特別職の地方公務員であり、消防庁は年額3万6500円、1日の出動報酬8千円を標準額としているが、金額は自治体ごとに異なる。

かつて報酬が団経由で団員に支給され、親睦会費として「中抜き」される不正が問題となり、消防庁は2022年8月に自治体へ是正通知を行った。通知では、団員から報酬を徴収する行為は「現金型」であれ「口座型」であれ是正の対象とされ、特に団員の通帳やキャッシュカードを預かる「口座型」は違法性の可能性も指摘されていた。

後を絶たない「上納」の実態

しかし、この通知後も「上納」の実態は続いており、取材で得た証言によると、香川県内や埼玉県所沢市のある消防団では、団側の求めに応じ、2023~25年に団員が報酬を団側に手渡ししたり、団の口座へ振り込んだりしていた。

消防訓練で放水する消防団員消防訓練で放水する消防団員

また、「口座型」の事例として、愛知県内のある団員は入団時に幹部から口座開設と通帳提出を指示され、通知より前のことだが、以来報酬を受け取れていないケースも報告されている。

全国的な広がりと当局の対応

これらの証言に加え、他の複数の団員からも同様の証言が得られており、是正通知後も全国で同様の報酬をめぐる不正が横行していた可能性がある。

消防庁は、こうした行為は「早急に是正すべき」との見解を示している。各地の自治体のコメントとして、所沢市は「事実確認をする」、香川県内の自治体は「分団長らから個別に聞き取ったが、強制的に徴収している事実はない」、愛知県内の自治体は「今年4月、外部からの通報により一部で不適切な管理の事実を把握しており、是正に向けて取り組んでいる」と報告されている。

結論:不正の早期かつ徹底的な是正が急務

自治体からの是正通知が出されたにもかかわらず、消防団における報酬の不適切管理や「上納」が依然として問題となっている実態が明らかになった。地域防災を担う消防団の信頼性を保つためにも、こうした不正行為の早期かつ徹底的な是正が求められる。

参考資料

朝日新聞社
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