カーマニアよ!高き「60代の壁」を越えろ!

中高年女性の間では、好きな歌手や俳優を応援する「推し活」が盛んに行われ、活き活きと輝く姿がよく見られます。では、同世代の男性、特に長年クルマを愛してきたカーマニアたちはどうでしょうか?彼女たちのように情熱を保ち、人生を謳歌できているでしょうか、それとも元気なくショボクレてしまってはいないでしょうか。多くのクルマ好きに等しく訪れる「60代の壁」は、一体どのようなものなのでしょうか。この壁を乗り越え、クルマへの変わらぬ愛情を維持するためのヒントを探ります。

60代に立ちはだかる「クルマ好きの現実」

若い頃、愛車はまるで自分の体の一部であるかのように大切にし、新型車の発表には胸を高鳴らせたものです。クルマはまさに恋愛対象であり、その情熱は性欲に近いものがありました。しかし、60歳を過ぎて、そうした初期の情熱を維持できるのは、ごくひと握りの恵まれたカーマニアだけかもしれません。残念ながら、大部分のクルマ好きは、この「60代の壁」を越えられず、いつの間にかただのお爺さんになっていくのが現実です。

個人的な話で恐縮ですが、私自身(清水草一)は現在63歳。今まさに、この「60代の壁」を肌で感じています。少し前まで、仕事以外でも個人的なカーマニア活動は非常に活発で、友人たちとドライブ旅行に出かける機会も豊富にありました。しかし近年は、一緒に行ってくれる人が見つからなくなり、遠出のドライブに行く機会は大幅に減少。同世代のクルマ好きたちも、明らかにクルマへの興味を失いつつあるように見え、かつてのクルマ談義も少なくなりました。愛車はガレージにありながらも、乗るのは近所の用足しが中心で、大切に顧みられることが少なくなると、ほとんど「動く冷蔵庫」と変わらない存在になってしまいます。そうなると自然と、新型車に胸を躍らせることも少なくなります。さらに、急速に進むクルマの電動化、特にBEV(電気自動車)には、どうにも昔のような魅力や興味が湧いてこないのが正直なところです。

若き日の清水草一氏が愛車日産ガゼールを背景に立つ。60代の壁に直面するカーマニアの過去と現在を対比。若き日の清水草一氏が愛車日産ガゼールを背景に立つ。60代の壁に直面するカーマニアの過去と現在を対比。

このような「クルマ離れ」の背景には、高齢化に伴う収入の減少も大きく影響しています。60歳を過ぎると、ほとんどの人が定年を迎え、延長雇用があったとしても収入は大きく減ることが一般的です。完全に会社を退けば、年金のみで生活することになり、高価格化が著しい新型車を購入する経済的余裕はほとんどありません。しかも、仮に新型車を買ったとしても、それを一緒に喜んでくれる人も見当たらず、自分自身も以前ほどウキウキしない。そんな状況下で、いちいち新型車にワクワクしろという方が無理な要求なのかもしれません。

もちろん、人間誰しも年を取るのは避けられないことです。若い頃に戻りたくても、それは叶わぬ夢。しかし、だからといって全てを諦めてしまうのは、あまりにももったいない選択です。もし、クルマ以外の新たな趣味が見つかればそれに越したことはありませんが、もし見つからなかったとしたら、愛するクルマにしがみつき、たとえ無理やりにでもその情熱を愛する努力をしてみませんか?人間にとって、心の底から愛せる対象があるかないかで、人生の充実度は大きく変わるはずですから。