フジテレビの経営問題にまで波及したタレント、中居正広氏(52)の女性トラブルの発覚から半年が経過した。フジテレビは6月25日に株主総会を終え、スポンサーも回復傾向にあり、7月6日には検証番組も放送されるなど、テレビ局側の騒動は沈静化に向かっているかに見える。しかし、騒動の根源である中居氏自身の問題は依然としてくすぶり続けており、特に被害者である元フジテレビアナウンサー、A子さんに対する誹謗中傷が再び増加している現状が深刻視されている。
第三者委員会の調査結果報告書の発表をもって一件落着となるかと思われたが、報告書における「性暴力」認定に対し、中居氏の代理人弁護士が公然と反論を発表したことで、事態は泥沼化の様相を呈している。第三者委員会は中居氏サイドからの度重なる再調査要求を拒否し、今後のやり取りを行わない姿勢を明確にしたため、その後の公式な進展はない。当初、中居氏の反論はフジテレビから訴えられる可能性を想定し、自身に有利な条件を整えるためと見る向きもあったが、現在では訴訟のリスクは低減したとされており、中居氏サイドからの新たな動きがなければ、このまま自然終息する可能性も指摘されている。
A子さんへの誹謗中傷再燃とその背景
問題が解決したとは言い難い最大の要因は、A子さんに対する誹謗中傷が再び勢いを増していることにある。この現象の背景にはいくつかの要因があるが、一つは中居氏自身が「性暴力はなかった」と主張したことによる影響が大きい。加えて、「第三者委の調査報告には問題がある」「失恋事案にすぎない」などと発言した、いわゆる「中居応援団」と呼ばれる層の発言も、誹謗中傷を煽る結果となったと考えられる。
しかし、ここにきて、中居氏とA子さんの間で実際に何が起きたのかをうかがわせる、トラブル発生直後のメールのやり取りが公開されたことで、状況は新たな局面を迎えた。このメールの内容が明らかになったことで、中居氏に対する非難の声が再び高まっている。
明らかになった中居氏とA子さんのメールやり取りの詳細
『週刊ポスト』(7月11日号)に掲載された、中居氏とA子さんのショートメールのスクリーンショットは、トラブル発生直後の二人の関係性や認識のずれを浮き彫りにした。
公開されたのは、トラブル翌日の2024年6月3日に中居氏がA子さんへ送ったとされるメッセージだ。《楽しかったです。早いうちにふつうのやつね。早く会おうね!》という内容は、まるで何も問題がなかったかのような、あるいはA子さんの心情を全く理解していないかのような鈍感さを示している。さらに翌4日にも《仕切り直しでのみましょう》と、次の約束を迫るようなメッセージを送っていたことが確認されている。
これに対し、A子さんは簡単な感謝の言葉や誘いを断る短い返信に留めていたという。中居氏からの連続した誘いのメッセージは、第三者委員会の報告書にも言及されている。《本事案後も、中居氏から女性Aに対してショートメールがきていたため、女性Aは、これに対応することが「耐えられず心が壊れ」た旨を述べている》と、報告書はA子さんが精神的に追いつめられていた状況を伝えている。
特に物議を醸しているのは、中居氏が送ったメッセージ中の《早いうちにふつうのやつね》という文言だ。この表現に対し、SNS上では「普通ではないことがあったからこそのメッセージではないか」「事態の重大性を全く理解していない」といった批判的な意見が多数寄せられ、炎上状態となった。このメールのやり取りは、第三者委の報告書に記載された「二人のメールのやり取り」の詳細を具体的に示すものとなり、中居氏が当時A子さんにどのような仕打ちをしたのかを間接的に示唆するものとして重く受け止められている。
中居正広氏の性暴力問題に関する発言で注目される橋下徹氏(右)とタレントの中居正広氏(左)
コメンテーター発言への懸念
この問題において、著名なコメンテーターたちの発言もまた、事態を複雑化させ、A子さんへの二次被害を招いた要因の一つと指摘されている。
古市憲寿氏の「独自で知っている話」発言
社会学者の古市憲寿氏(40)は、4月4日放送の関西テレビ『旬感LIVE とれたてっ!』に出演した際、第三者委員会がWHOの定義を引用したことに疑問を呈した上で、報告書に書かれていない「僕が独自で知っている話もある」と発言した。この「独自の話」が何を根拠としているのかは不明だが、憶測を呼ぶ発言として波紋を広げた。
橋下徹氏の性暴力に対する見解と炎上
元大阪府知事で弁護士の橋下徹氏(56)は、5月14日放送の同番組に出演し、中居氏が女性の意に反した性行為を行ったことは認めつつも、《その当日の状況を見てもらえれば、こういうふうに性暴力だとか、少なくともこれだけ社会的制裁を受けるような話ではないと感じる人も僕はすごい増えると思いますよ》と述べた。さらに、自身が把握している中居氏側の言い分が出れば、「これが性暴力なのか」と感じる人が多くなるだろうとし、《この状況を見て、多くの法律家が、今言われていることと全然違うよねって感じている人がすごい多い》と語った。その後、橋下氏は『週刊文春』の取材に対し、このトラブルを「失恋事案」であるかのように語ったことで激しい批判を受け、炎上状態となった。
橋下氏のSNSでの反論と主張
橋下氏は自身のX(旧Twitter)でこれに対し反論を行った。《僕は本件自体を失恋事案とは言っていない。男女の気持ちの行き違いの事案だと。相手方の内心だけで不同意・同意を決めれば失恋事案でも後に責任追及を受けてしまうと一般論を言ったまで。また、僕が中居さん側からの事実しか聞いていないと女性側は言われているようだが、そうであれば女性側から事実を聞いてもいい。中居さん側、女性側から事実を聞いて、性暴力にあたるかどうか、判断したい。フジテレビ第三者委員会よりも、よほど的確に評価できる自信はある》と投稿し、あくまで一般論としての発言であったこと、そして自身の方が第三者委員会よりも適切に判断できるという持論を展開した。
これらの発言に対し、元テレビ朝日法務部長である西脇亨輔弁護士は懸念を示している。「古市氏も橋下氏も中居氏の正式な代理人ではなく、どのように事実確認したのかも不明です。それなのに断片的な話を広めることは、印象操作に繋がるおそれがあり適切ではないと思います」と、不確かな情報に基づいた発言が世論を誤った方向へ誘導するリスクを指摘する。
橋下氏への質問状と回答
果たして、橋下氏や古市氏は件のメールのやり取りも含め、本当に正確な事実を把握していたのか、そして「多くの法律家」が彼らの見解に同意しているのか、という疑問が残る。そこで、橋下氏に対し、メールで質問状を送付した。
Q:『旬感LIVE とれたてっ!』などで中居氏について発言された件で、橋下氏はどのようなかたちで事実確認をされたのでしょうか?
A:情報源は明らかにできません。
Q:7月11日号週刊ポストに中居氏とA子さんとのショートメールのやり取りが掲載されましたが、これらやり取りの内容を橋下氏は報道前からご存知でしたか?
A:知っています。
Q:法律家などから「正式な代理人でもないのに、断片的な話を広めることは印象操作に繋がるおそれがあるのではないか?」という指摘があることを、橋下氏はどのように考えられますか?
A:コメンテーターには表現の自由があります。ちなみに、フジテレビ第三者委員会は中居さんとの関係では僕と同じ一コメンテーターと同じ立場であり、僕への上記批判はフジテレビ第三者委員会にも向けられるべきものと考えます。
橋下氏の回答からは、情報源の秘匿、メール内容の事前把握、そしてコメンテーターとしての表現の自由と第三者委員会への対抗意識がうかがえる。
結論
中居正広氏を巡る性暴力問題は、第三者委員会の報告後も中居氏側の反論、一部コメンテーターによる発言、そして新たに公開されたメールの内容などにより、依然として混乱の中にあり、解決には至っていない。特に深刻なのは、これらの状況下で被害者であるA子さんに対する心ない誹謗中傷が再燃していることである。メールの内容は、トラブル後の当事者間の認識のずれ、特に中居氏の鈍感さとA子さんの精神的苦痛を明らかにし、一部コメンテーターの発言が二次被害を助長した側面は否定できない。彼らが自身の発言がA子さんにもたらす影響について、どれほどの責任を感じているのかが問われている。
文:佐々木博之(芸能ジャーナリスト)
参考文献:
- FRIDAYデジタル
- 週刊ポスト 7月11日号
- 関西テレビ『旬感LIVE とれたてっ!』放送内容
- 週刊文春 記事
- 橋下徹氏 X(旧Twitter)投稿