お盆の時期は何かと出費が増える季節であり、この機会に家計や資産の状況を改めて見直す方も多いのではないでしょうか。特に日本のシニア世代にとって、公的年金だけでは賄いきれない支出や、医療・介護といった将来的な不安への備えは不可欠です。そのため、老後資金としての貯蓄の重要性は一層高まっています。
「他の世帯はどれくらい貯蓄しているのか?」「平均的な貯蓄額はどの程度か?」といった疑問は、多くの日本国民が抱く関心事です。本記事では、60代・二人以上世帯における「貯蓄3000万円以上」の保有割合や、公的年金の実際の受給額について詳しく解説し、老後の生活設計を考える上での一助とします。
60代の平均年金受給額はいくら?
厚生労働省が公表した「令和5年度 厚生年金・国民年金事業の概況」によると、日本における65歳以降の平均的な年金額は、国民年金が月額5万円台、厚生年金が月額14万円台となっています。これらの年金は老後の生活を支える基盤となりますが、それだけでは十分でないケースも少なくありません。年金に加えて、どれだけの貯蓄を確保できているかが、安定した老後生活を送る上で非常に重要な要素となります。
では、実際に二人以上の世帯では、どの程度の貯蓄を保有しているのでしょうか。
60代・二人以上世帯の「貯蓄3000万円以上」の割合と現実
J-FLEC 金融経済教育推進機構が実施した「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」のデータから、60代・二人以上世帯の貯蓄(金融資産を保有していない世帯を含む)の実態を確認します。なお、この貯蓄額には、日常的な出し入れや引き落としに備えている普通預金残高は含まれていません。
調査結果によると、60代・二人以上世帯の平均貯蓄額は2033万円、中央値は650万円でした。この数値から、一部の世帯に貯蓄が集中している状況が伺えます。特に注目すべきは、貯蓄額が3000万円以上ある世帯が全体の20.0%を占め、およそ5世帯に1世帯がこの水準を達成していることです。
60代二人以上世帯の貯蓄額分布を示す円グラフ:3000万円以上の割合と貯蓄ゼロの割合
一方で、金融資産をまったく保有していない「貯蓄ゼロ」の世帯も20.5%にのぼっており、こちらも約2割を占めるという厳しい現実があります。このデータは、日本の60代世帯において、老後の貯蓄状況に非常に大きな開きが存在することを示唆しています。退職後には、予期せぬ医療費や住宅の修繕費など、まとまった支出が発生する可能性も考慮しておく必要があります。
まとめ:計画的な老後資金の準備を
日本の60代夫婦の年金受給額と貯蓄状況を分析した結果、公的年金だけでは不十分な場合が多く、個々人の貯蓄状況に大きな差があることが明らかになりました。特に、貯蓄3000万円以上を達成している世帯が約2割存在する一方で、「貯蓄ゼロ」の世帯も同程度存在するという二極化が進んでいます。
このような状況を踏まえると、安定した老後生活を送るためには、現役のうちから計画的に貯蓄を進めること、そして資産運用を視野に入れることが極めて重要です。将来の不確実性に備え、早めに行動を起こすことが、豊かなシニアライフを送るための鍵となるでしょう。
参考文献
- 厚生労働省: 「令和5年度 厚生年金・国民年金事業の概況」
- J-FLEC 金融経済教育推進機構: 「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」