1984年4月に放送を開始した『超時空騎団サザンクロス』は、昭和のロボットアニメ史において非常にユニークな存在です。「超時空シリーズ」の第3作として位置づけられるこの作品は、当初全39話の予定でしたが、実際には23話で放送が打ち切られました。さらに、その後の権利問題を巡る係争により、地上波での再放送がほとんど行われず、「封印作品」のような扱いを受けることとなりました。しかし、現代の視点から見ると、本作は当時のアニメとしては時代を先取りした要素に満ちた、非常に意欲的な作品だったと言えるでしょう。
『超時空騎団サザンクロス』の概要とストーリー
物語の舞台は21世紀末、戦争によって荒廃した地球を離れた人類が新たな居住地を求めて開拓を進める植民惑星グロリエです。長い年月をかけてようやく自給自足体制を確立したこの惑星に、突如として正体不明の異星人「ゾル」の巨大な船団が現れ、惑星の即時明け渡しを要求します。
地球本星からの具体的な支援が期待できない絶望的な状況の中、未知の敵であるゾルを迎え撃つことになったのが、開拓惑星の自衛軍である「サザンクロス軍」です。物語の主人公は、サザンクロス軍戦略機甲師団に所属する分隊長、ジャンヌ・フランセーズ少尉。彼女は奔放で型破りな性格を持ちながらも、持ち前の行動力と決断力で、全人類の存亡をかけた過酷な戦いに身を投じていきます。ゾル人は常に3人1組で行動する「三位一体」の生命体として描かれ、彼らの正体や彼らが執着する「生命の花」との関係など、多くの謎が提示されましたが、残念ながら番組の打ち切りにより、これらの核心部分は最後まで明かされることはありませんでした。
革新的な女性主人公と意欲的なメカニックデザイン
本作の最大の特徴の一つは、主人公が女性の正規軍人であったことです。現在でこそ女性が主要な役割を担うアニメは珍しくありませんが、1980年代前半の日本のロボットアニメにおいて、女性が単独で主役を務め、軍隊の指揮官として描かれたことは、当時としては極めて先駆的で意欲的な設定だったと言えます。
メカニックデザインにおいても独創性が光ります。主人公側が搭乗する機甲スーツ「アーミング・ダブレット」は、従来の巨大ロボットとは異なり、着用者の動きを拡張する「パワードスーツ」に近い発想で設計されています。一方、敵であるゾル人が操る機動兵器「バイオロイド」は、「人造生物材料工学構造」という設定に基づき、生体的な曲線を持つ有機的なフォルムが非常に印象的でした。しかし、関連商品であるプラモデル展開においては、敵メカであるバイオロイドが商品化された一方で、主人公側が使用する巨大な戦闘メカ(※劇中終盤に登場予定だったと推測されるもの)は一切商品化されないという異例の事態が生じました。その代わりに、1/12スケールのアーミング・ダブレットが非常に詳細なギミックと共に立体化され、これは後のフィギュア文化へと繋がる先駆的な試みとなりました。
超時空騎団サザンクロス オリジナルサウンドトラックジャケットに描かれた主人公ジャンヌ・フランセーズと仲間たち
権利問題による「封印」と海外での高い評価
『超時空騎団サザンクロス』が日本のファンから「不遇の作品」と呼ばれる背景には、制作会社であるタツノコプロと、広告代理店であり企画にも関わったビックウエストとの間で発生した権利係争が大きく関わっています。この複雑な権利問題の結果、日本国内では地上波での再放送がほとんど行われず、作品に触れる機会が極端に限定されてしまいました。
一方で、海外では異なる道を歩みました。『超時空要塞マクロス』、『超時空騎団サザンクロス』、そして『機甲創世記モスピーダ』の3作品が、カール・メイチェク氏によって『ロボテック』シリーズとして大幅に改変・再編集されました。この『ロボテック』は北米を中心に絶大な人気を獲得し、『サザンクロス』は形を変えつつも、日本国内以上の知名度と評価を得ることとなりました。
超時空騎団サザンクロスに登場するメカ(バイオロイド、アーミング・ダブレットなど)やキャラクターのプラモデル
時代を先取りした意欲作だった可能性
放送当時の視聴率低迷が打ち切りの直接的な原因とされていますが、『超時空騎団サザンクロス』は、女性主人公の活躍、パワードスーツ的なメカの概念、生体機械というユニークな設定、異星人とのファーストコンタクトSFといった、当時の常識から見れば非常に野心的で新しい要素に満ちた作品でした。これらの要素は、後のアニメやSF作品に影響を与えたとも言えます。打ち切りという残念な結果に終わったものの、「『サザンクロス』は時代が追いついていなかった、早すぎた作品だった」と語るファンが多いことにも、十分うなずけるのかもしれません。