沼津の鉄道高架事業、審理始まる 県収用委、双方から意見聴取





県収用委員会は第1回の審理を開き、起業者と地権者らから意見を聴取した=4日、沼津市大手町

 静岡県沼津市のJR沼津駅付近の鉄道高架事業計画の未買収地について県と市が強制収用を求めた裁決申請をめぐり、県収用委員会(本野仁会長)の第1回公開審理が4日、同市のプラサヴェルデで開かれた。事業の起業者である県と市、事業に反対する地権者らの双方から意見を聴取した。第2回の開催は未定。(石原颯)

 裁決申請に向けた審理は異例の対応で始まった。午前10時半から始まった審理には「起業者」として県や市の職員18人、「土地所有者・関係人」として代理人を含め、地権者ら12人が出席。冒頭に県職員が事業計画の概要を説明した後、地権者らに事業への反対意見などを述べる機会が特別に設けられた。

 地権者による強い要望があったためで、県収用委からは「特別の配慮」である旨が説明された。代理人を含め7人が意見陳述を行い、「構想当時と道路状況が変わり、駅南北の交通量は減っている」といった事業への疑問や、「地権者や関係住民に対する説明責任を果たしてこなかった」など県や市の対応への不満を述べた。

 その後は、裁決内容に関わる土地、物件を失うことによる補償の中身や算出方法などについての質疑が行われた。県収用委がさらに聴取の必要があると判断すれば後日、第2回を開催する。

 公開審理は土地収用法に基づく手続きで、県収用委が起業者側や地権者ら双方から意見聴取し、裁決を行うための参考とする。県収用委として判断する裁決の内容は補償額や明け渡し期日など。事業や強制収用の是非については判断しない。

 審理の対象となるのは原地区の地権者10人の所有地計5334平方メートル。物件所有者は42人。物件所有者のうち、予定地内の立ち木所有者で作る「立ち木トラスト」の関係者は36人に上る。県と市は未買収地の立ち入り調査を経て、今年9月に県収用委へ裁決申請を行っていた。

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