ロシアとウクライナ間のドローン攻撃激化の中、6月1日のウクライナによるロシア空軍基地への大規模攻撃が特に注目されています。民生技術の軍事転用に詳しい現代戦研究会技術顧問の平田知義氏も特筆すべき点が多いと指摘するこの攻撃は、広範なロシア国内の空軍基地を標的とし、従来の攻撃とは一線を画しました。
攻撃の規模と被害
6月1日、ウクライナはロシア国内に広く点在する空軍基地に対し、大規模なドローン攻撃を実行しました。ウクライナは117機を使用し、戦略爆撃機含む多数の軍用機を破壊・損傷、被害額は約70億ドル(日本円で約1兆円)に達すると発表。ニューヨーク・タイムズ紙検証やアメリカおよびヨーロッパの安全保障当局推定も、ムルマンスクのオレニャ空軍基地やイルクーツクのベラヤ空軍基地などで十数機、最大20機のロシア戦略航空機(Tu-95、Tu-22Mといった長距離戦略爆撃機、さらにはA-50早期警戒管制機などを含む)に損害を確認しています。
攻撃の戦略的意義
この攻撃の特筆すべき点として、シベリア地域がウクライナのドローンによって攻撃されたのはこれが初めてであること、そして核搭載能力を持つ航空機が配備されているオレニャ基地のような戦略的に極めて重要な拠点が標的となったことが挙げられます。
国際的な評価とロシアへのメッセージ
この攻撃に対し、欧州連合(EU)の駐ウクライナ大使カタリーナ・マテルノワ氏は「ロシアの戦略爆撃機の30%以上を無力化し、ロシアは屈辱を受け、怒りに満ちている」と指摘しました(6月6日、Facebookへの投稿)。また、ジオテクノロジーセンター「GLOBSEC」のディレクターを務めるジョン・アレン退役米海兵隊大将は、ウクライナ通信社の記者に対し、「ロシア人は、自国の領土のどの部分も安全だと感じるべきではない。今回の作戦は、ウラジーミル・プーチンとロシアに、ロシアにはウクライナが到達できない潜在的に安全な場所はないことを示した」とコメントしました(6月14日)。
ロシアのプーチン大統領。ウクライナによる大規模ドローン攻撃を受け、戦略的脆弱性が露呈。
攻撃が示す含意
今回のウクライナによる大規模ドローン攻撃は、その規模とシベリアへの到達という前例のない地理的広がり、そして戦略目標への打撃により、ロシアの防衛網の脆弱性を露呈させると同時に、ウクライナがロシア国内のいかなる場所にも打撃を与える能力を持つことを世界に明確に示しました。
出典
- 現代戦研究会 技術顧問 平田知義氏
- ニューヨーク・タイムズ紙 (2024年6月1日)
- EU駐ウクライナ大使 カタリーナ・マテルノワ氏 (2024年6月6日 Facebook投稿)
- ジオテクノロジーセンター「GLOBSEC」ディレクター ジョン・アレン氏 (2024年6月14日 ウクライナ通信社へのコメント)