かつては60歳で定年退職が一般的でしたが、現在では多くの方が65歳以降も働き続けています。定年後も働くことで厚生年金保険料が発生し、将来の年金額が増加しますが、負担に対してどれだけ増えるか疑問に思う方も少なくありません。この記事では、定年後も65歳まで働く場合の厚生年金増加分について解説します。
定年後の就労と厚生年金
高齢者雇用安定法の改正(2013年、2021年)や、働く意欲・経済的理由から、60歳以降の就労は一般的になり、60〜64歳で74.3%、65〜69歳で53.6%の方が働いています(※1)。公的年金制度には、国民年金と、会社員が加入する厚生年金保険があります。会社員は両方に加入。60歳以降も常勤で働く場合、70歳になるまで給与から厚生年金保険料が控除されます(※2)。
支払う厚生年金保険料
厚生年金保険料は、毎月の給与に基づき算出される標準報酬月額(※4)に保険料率(18.3%)を乗じた額の半分です。相談者の例(年収700万円=月収約58.3万円)では、標準報酬月額59万円に基づき、本人負担は約5万4000円となります(59万円 × 9.15% = 5万3985円)。
増える将来の年金額
保険料支払いにより増える年金額は「平均標準報酬月額 × 5.481/1000 × 加入月数(注)」で計算されます。相談者の例で、60歳から65歳までの5年間(60ヶ月)働いたとすると、月額約1万6000円の年金が増加します(59万円 × 5.481/1000 × 60ヶ月 ≈ 1万6169円/月)。(注:過去の報酬には再評価率が乗じられます)
保険料負担とその価値
月々約5万4000円の保険料に対し、増える年金は月約1万6000円。一見負担が大きいと感じるかもしれませんが、年金は一生涯受け取れます。およそ10年半受給すれば、支払った保険料の総額に相当する額になります。定年後の就労による厚生年金加入は、長期的な生活設計における重要な柱となります。
65歳まで働くことで増える厚生年金のイメージ図
結論として、定年後も65歳まで働き厚生年金に加入することは、毎月の保険料負担がある一方で、将来の年金受給額を生涯にわたって増加させます。これは、予測困難な長寿化リスクに備える上で、非常に価値のある選択と言えるでしょう。