東京メトロ切符「記念持ち帰り」を巡るSNS炎上、駅員の対応と意外な真意

日常のささいな出来事をX(旧Twitter)に投稿した内容が、瞬く間に賛否両論の嵐を巻き起こし、社会的な注目を集める事態となりました。話題の中心となったのは、東京メトロの駅員が乗客の「記念に切符を持ち帰りたい」という申し出に対し、切符を折り曲げて渡したとされる一件です。この「切符折り曲げ」問題は、SNS上で急速に拡散され、駅員の対応や鉄道会社のルール、さらにはSNS時代の情報伝播のあり方について、幅広い議論を呼び起こしました。果たして、この一見不親切に見える対応の裏には、どのような真意が隠されていたのでしょうか。

記念に持ち帰りを希望した切符が折り曲げられた様子(イメージ)記念に持ち帰りを希望した切符が折り曲げられた様子(イメージ)

X投稿から始まった賛否両論の波紋

ことの発端は、2023年8月17日、あるXユーザーが投稿した一枚の写真とコメントでした。写真には、210円と記された東京メトロの切符が半分に中途半端に折り曲げられた状態で写っています。投稿主は名古屋在住で、東京を訪れた際の記念として昔ながらの切符で電車に乗り、降車時に駅員に「記念に持ち帰りたい」と伝えたところ、「なんでですか」と言われた挙句、切符を折り曲げて渡されたと述べています。そして、「やっぱり東京は怖い」という言葉で締めくくられていました。

この投稿は、わずか1日で約2000万インプレッション(8月21日現在では2600万インプレッション超)を記録し、瞬く間にインターネット上で大バズりしました。多くのユーザーがこの一件に対し、様々な意見を表明し、議論が加熱していきました。

Xに投稿され話題となった、210円の東京メトロ切符が半分に折り曲げられた写真Xに投稿され話題となった、210円の東京メトロ切符が半分に折り曲げられた写真

ネット上の議論:「不正防止」説と「対応への疑問」

投稿のコメント欄には、駅員の対応を巡り、多岐にわたる意見が寄せられました。

一部のユーザーからは、「持ち帰らせる場合には不正防止で折り曲げることになっているルールだ」という声が上がりました。使用済みの乗車券が再び利用されることを防ぐための措置ではないか、という推測です。しかし、これに対し投稿主は「折り曲げ云々は、通常の取扱方(無効印を押印し、穴開けパンチをする)をした上(後)での話です。不正使用を防ぐ観点では、折り曲げたくらいじゃほぼ意味ないです」と反論。実際に、東京メトロで無効印を押してもらった経験のある別のユーザーが過去の写真を投稿し、「東京メトロは無効印、鋏とかあるはずなんですが……ひでぇ」「駅員さんって温厚な人多いイメージだったけどこんなことする人いるんだ……」と、駅員の対応に落胆する声も多数見受けられました。

一方で、投稿そのものに対する批判も存在しました。「東京と関係なくないですか? 風評被害みたいで悲しいです」といった意見が寄せられ、特定の地域をネガティブに印象付ける表現への疑問が呈されました。

SNS時代の情報拡散力とITジャーナリストの見解

この騒動の背景には、SNSが持つ圧倒的な情報拡散力があります。ITジャーナリストは、この投稿について「駅員に嫌なことをされたショックでXに投稿したのでしょう。一般論ですが、匿名で投稿できる今の時代、何が本当かわかりません。バズらせる目的で、自分で仕掛ける人もいますからね。この投稿の真偽は不明ですが、たった1日で約2000万インプレッションまで伸びて大バズリしています」と指摘。投稿の真偽が不明な点や、意図的に注目を集めようとする可能性にも言及しました。

また、投稿主自身も、バズった後に「他人を非難して注目されるのは気が引けるタチなので、ちょっとびっくりしたな~的な話だと思っといてください」とコメントしており、当初の意図とは異なる反響の大きさに戸惑いを見せていました。

東京メトロが語る「切符折り曲げ」の真意

FRIDAYデジタルは、この「切符折り曲げ」投稿について東京メトロに直接質問を行いました。

Q. 現在、XをはじめSNSなどで切符折り曲げ投稿が話題になっていることは把握されていますか?
「SNS上に投稿されていたことは把握しております」

Q. 投稿のとおり、駅員が切符を折り曲げたのは事実でしょうか?
「投稿のあった内容については、事実確認が取れておりません」

Q. 不正防止などのため、切符を折り曲げて客に渡すことはありますか?
「使用済みの乗車券は、係員に引き渡す旨を運送約款で定めております。お客様から『持ち帰りたい』等のお申し出をいただいた際は、状況を勘案しお渡しすることがございます。この場合、無効である旨のスタンプを押印させていただくことから、そのインキがお客様の手指や衣服等に付着しないよう乗車券を軽く折り、お客様にお渡しすることがございます」

東京メトロからの回答は、SNS上の議論で主に挙げられていた「不正防止」とは異なる、意外な理由を明かしました。使用済み乗車券は運送約款により係員に引き渡すのが原則であるものの、要望があれば無効印を押して渡すことが可能であること。そして、その際にインクがお客様の指や衣服に付着しないよう、「思いやり」として切符を軽く折って渡す場合があるというのです。

結論:SNS時代の情報と「思いやり」

今回の東京メトロ切符「折り曲げ」騒動は、SNSがいかに日常のささいな出来事を増幅させ、社会的な議論へと発展させるかを示す典型的な事例となりました。駅員の「思いやり」から行われた可能性のある行為が、文脈を欠いた情報伝達によって誤解され、ネガティブな印象を与えかねない形で拡散されてしまったのです。

情報が瞬時に、そして広範囲に伝わるSNS時代において、発信する側は言葉の選び方や情報が与える影響について深く考慮する必要があり、また受け取る側も、即座に判断を下す前に情報の背景や全体像を確認する姿勢が求められます。今回の東京メトロの対応の真意が明らかになったことで、SNS上の情報は多角的な視点から冷静に判断することの重要性が改めて浮き彫りとなりました。


参考文献