トランプ大統領、カナダに35%関税発表 他国にも一律関税を示唆

【ワシントン/オタワ 10日 ロイター】 米国のトランプ大統領は10日、カナダからの輸入品に対し35%の関税を課すとする書簡を公表した。他の多くの貿易相手国にも15%または20%の一律関税を課す予定だと述べた。このトランプ関税は、国際貿易に新たな波紋を広げている。

カナダへの新たな関税とその影響

書簡は、カナダのカーニー首相に対し、この新たな関税が8月1日に発効することを通知する内容だった。トランプ大統領は自身のソーシャルメディアへの投稿でこれを公表し、もしカナダが報復措置を取るならば、関税率をさらに引き上げると牽制した。これは現行の25%から大幅な引き上げであり、米国との貿易協定合意に向けて動いていたカーニー首相にとっては大きな打撃となる。

ワシントンのホワイトハウスで撮影されたトランプ前大統領の写真。カナダ製品への35%関税発表に関連。ワシントンのホワイトハウスで撮影されたトランプ前大統領の写真。カナダ製品への35%関税発表に関連。

USMCA協定品目の扱いは不確定

政権当局者によると、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の対象品目に対する関税の除外措置は維持される見込みだ。また、エネルギーと肥料に対する10%の関税も変更されないだろうとの見通しが示された。ただし、トランプ大統領自身はこれらの問題について最終決定を下していないとされており、今後の動向が注目される。

関税措置の背景にある理由

トランプ大統領は書簡の中で、新たな関税措置の理由として、カナダからの合成麻薬フェンタニルの流入増加や、カナダの関税・非関税貿易障壁が米国の酪農家などに与える苦痛を挙げた。これらの問題が米国経済への影響を及ぼしていると主張している。

カナダ側の反応

これに対し、カナダ側は、カナダ産のフェンタニルはごく微量であると説明し、国境管理を強化する措置を講じていると述べている。カーニー首相は8日に自身のXアカウントで、「カナダは北米でのフェンタニル蔓延阻止において重要な進展を遂げた。わが国は米国と協力を続け、両国の人命を救い、地域社会を守ることに尽力する」と投稿し、問題への取り組みと米国との連携姿勢を強調した。

貿易交渉の具体的な進め方については、書簡は詳細に触れていない。しかし、トランプ大統領は「関税は貴国との関係次第で上方にも下方にも修正される可能性がある」と明記しており、カナダとの今後の関係が関税率に影響することを示唆した。

広がる関税措置:他国への影響

トランプ氏はここ数日、銅に50%の関税を課すとするなど、矢継ぎ早に関税措置を発表している。同盟国である日本や韓国を含む多くの国に対しても、新たな関税に関する書簡を送付したことが明らかになっている。10日に放映されたNBCニュースとのインタビューでは、まだ書簡を受け取っていない他の貿易相手国は、おそらく一律関税に直面するだろうと述べた。

「全ての国が書簡を受け取る必要はない。それは分かっているはずだ。われわれは関税を設定しているだけだ」と述べた。さらに「20%であろうと15%であろうと、残りの全ての国が支払うことになる。今から決める」と語り、広範な国への影響を示唆した。

国際社会の反応

さらに、ミャンマー軍政トップは、トランプ氏に対し、自身の国に対する40%の関税率を10─20%に下げるよう求め、必要なら交渉団を派遣する用意があると伝えたと、国営メディアが11日に報じた。フィリピンのマルコス大統領も今月、トランプ氏と初の会談を持ち、関税について協議する予定であることを同国外相が明らかにした。各国の対応が注目される。

今回のトランプ大統領によるカナダへの高関税発表と他国への一律関税示唆は、米国の貿易政策における新たな展開を示している。特に長年の友好国であるカナダへの強硬姿勢は、今後の北米貿易関係に影響を及ぼす可能性がある。日本を含む他の多くの国々も対象となる可能性があり、国際的な貿易摩擦の行方が注視される。

【出典】 ロイター