いよいよ投開票が迫る参議院選挙。今回、特に注目が集まっているのが、かつて「保守王国」と呼ばれ、自民党の堅固な地盤とされてきた鹿児島選挙区です。ここで、前代未聞とも言える政治的な異変が起きています。この選挙区の戦いは、選挙全体の行方を左右する可能性も秘めています。
保守王国・鹿児島で何が起きているのか
参議院選挙における「1人区」は、全体の勝敗を大きく左右する激戦区となる傾向があります。前回参院選では、全国32ある1人区のうち自民党が28勝を収めました。定数1の鹿児島選挙区もその一つであり、常に自民党が優位を保ってきた地盤です。しかし、今回の選挙戦では、この「保守王国」の構図を根底から揺るがす事態が発生しています。
鹿児島参院選、保守王国を揺るがす選挙戦の風景。自民重鎮の娘である無所属候補の街頭演説か。
自民党重鎮の娘、立憲民主党の推薦で無所属出馬の背景
この異変の中心にいるのが、無所属で立候補した尾辻朋実氏(44)です。彼女の父は、参議院議員を6期36年にわたり務めた自民党の重鎮、尾辻秀久氏。朋実氏自身も長年、父の秘書として政治の世界に深く関わってきました。しかし今回、彼女を推薦したのは、まさかの立憲民主党でした。これは、自民党の地盤である鹿児島において、異例の「反乱劇」と見られています。
きっかけは、父・秀久氏の政界引退に伴う後継候補の選定でした。朋実氏も自民党の公募に手を挙げましたが、公認を得られず、「鹿児島県民の皆様の信託を受けられるかどうか、これは別の話である。立候補を模索する、このことを諦めない覚悟をしました」と、無所属での出馬を決断しました。選挙活動では、経済問題に触れ、「モノの値段が上がるということは、これにきちんと賃金上昇を追い付かせることができれば、必ず今の子どもたちの時代は、若い人たちの時代は、もう一度日本の経済が右肩上がりになる」と訴えています。
地元選出・森山幹事長の危機感と自民党候補
この前代未聞の事態に、強い危機感を募らせているのが、鹿児島県がお膝元である自民党の森山裕幹事長(80)です。森山氏は、「鹿児島らしくない選挙になっているのは残念」と述べ、異例の状況に対する率直な思いを語りました。
自民党の森山裕幹事長。地元鹿児島での参院選の異例の展開に危機感を表明。
対する自民党が擁立したのは、衆・参合わせて10年の国会議員経験を持ち、知名度と実績のあるベテラン、園田修光氏(68)です。森山幹事長は、園田氏への支持を強く訴え、「園田さんに、なんとしてもお力をいただきたい」と有権者に呼びかけています。園田氏の陣営には、小泉進次郎氏らが応援に駆けつけるなど、党を挙げての支援が行われています。
参議院選挙を前に、かつての「保守王国」鹿児島で繰り広げられる自民党重鎮の娘と党公認候補との異例の対決は、全国の選挙戦にも大きな影響を与える可能性があります。地元選出の森山幹事長が「らしくない選挙」と表現するほどの混戦は、投開票日までの残り数日間、さらに激しさを増すことが予想されます。
【参考】