ドラマの最終回で描かれなかった物語、通称「その後」が、続編やスピンオフ作品で語られることは少なくありません。1999年に放送され、カルト的な人気を誇ったミステリードラマ『ケイゾク』も、その代表例の一つといえるでしょう。しかし、かつて多くのファンを魅了した「柴田純」と「真山徹」という異色コンビのたどる運命は、『ケイゾク』の世界観を引き継ぐ作品で明らかになり、その内容は多くの視聴者に衝撃を与えました。
『ケイゾク』は、迷宮入り事件を担当する警視庁捜査一課二係を舞台に、東京大学卒ながら並外れた洞察力を持つ新人刑事、柴田純(演:中谷美紀)が活躍する姿を描いた作品です。コメディタッチとシリアスな展開、複雑に絡み合う伏線、そして二係の個性豊かなメンバーたちが織りなす独特の世界観が支持されました。中でも、掴みどころのない柴田と、元公安部で冷静沈着な真山徹(演:渡部篤郎)の掛け合いは、本作最大の魅力の一つであり、多くの視聴者がこのコンビの行く末を見守りました。
中谷美紀が演じた『ケイゾク』の主人公・柴田純が表紙を飾る雑誌
「SPEC」シリーズとの世界観共有
柴田と真山の「その後」は、『ケイゾク』と同じ世界観を共有するドラマ「SPEC」シリーズでさりげなく描かれています。戸田恵梨香さんと加瀬亮さんが主演した『SPEC~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~』は、『ケイゾク』からおよそ10年後の世界を舞台にしており、竜雷太さん演じる野々村光太郎や、徳井優さん演じる近藤昭男といったおなじみのキャラクターが登場します。そして、柴田や真山の名前も会話の中で言及され、その存在が示唆されていました。
「SPEC」シリーズの主な舞台となる警視庁公安部公安第五課未詳事件特別対策係、通称「未詳」は、特殊な能力(SPEC)を持った人間が関与する事件を専門に扱う部署です。この未詳の設立に深く関わり、野々村を係長に抜擢した人物こそ、柴田純であることが後に明かされます。
柴田純、驚きの「その後」
連続ドラマシリーズの前日譚にあたる『SPEC~零~/警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿』では、柴田が未詳設立に関わった経緯が明確に語られると共に、彼女が「公安部長」という要職にまで昇進していることが示唆されています。また、『SPEC』本編でも、野々村係長が「昔、二係で一緒に働いた東大出身の女刑事」に言及し、その女性が現在、かなりの地位に就いていることを語るシーンがあります。キャリア組として警察庁に入庁した柴田が、ドラマ終了後も順調に出世を重ねていたという事実は、『ケイゾク』ファンにとっては嬉しい描写であり、誇らしい「その後」の姿といえるでしょう。
真山徹、あまりにも悲劇的な結末
一方、真山徹のたどった運命は、多くのファンにとって残念なものでした。『SPEC~零~』の中で、野々村係長と近藤昭男の会話の中で、真山がすでに「殉職」していることが語られます。さらに、配信ドラマ『SPECサーガ黎明篇「サトリの恋」』では、埼玉県入間郡で発見された遺体が真山のものであるというニュース速報が流れるシーンがあり、彼の死が確定的なものとして描かれました。
特に『SPEC~零~』のマンガ版には柴田が登場する一方で、真山の名前は一度も出てきません。それだけに、「真山殉職」という事実は、ファンに大きな衝撃を与え、SNS上ではトレンド入りするなど大きな話題となりました。多くの視聴者が愛した真山の、あまりにも突然で悲劇的な結末は、今なおファンの心に深く刻まれています。
「SICK’S」における柴田の運命と作品の位置付け
「SPEC」シリーズの世界観を引き継ぐ配信ドラマ『SPECサーガ完結篇「SICK’S 恕乃抄」』では、柴田純も壮絶な最期を迎えます。シリーズの最終話において、あっさりと刺殺されてしまうという衝撃的な描写がなされました。しかし、『SICK’S』は、これまでのシリーズと比べて登場人物の設定や描かれ方に異なる要素が見られるため、パラレルワールド的な位置付けとして解釈する声も少なくありません。このため、柴田の死が「正史」として確定しているかどうかについては、ファンの間でも様々な意見があり、判断が分かれるところです。
まとめ
『ケイゾク』の主人公である柴田純と真山徹の「その後」は、「SPEC」シリーズを通じて驚くべき形で明かされました。柴田は公安部長へと昇進するという輝かしいキャリアを築いていた一方で、真山は殉職という悲劇的な最末をたどっていました。これらの事実は、長年のファンに大きな衝撃を与え、SNSなどで活発な議論を巻き起こしました。「SICK’S」における柴田の死は、その位置付けについて解釈が分かれるものの、シリーズ全体に奥深さを加えています。ドラマ本編やスペシャル版で幾度となく生死の境をさまよいながらも生還を果たしてきた二人だからこそ、いつか再び彼らの物語が動き出す日を期待する声も少なくありません。
参考文献: