参院選終盤戦:石破自民に立ちはだかる課題と注目激戦区の情勢

夏の参院選(3日公示、20日投開票)は終盤戦に差しかかっている。前哨戦ともいわれた東京都議選での大敗を経て、石破茂首相が掲げる参院選の勝敗ラインは、非改選議席を含めた過半数獲得の「50」と低く設定されたが、この目標水準に対してすでに党内外から不満の声が上がっている状況だ。

参院選に向けて自民党が直面する課題は多岐にわたる。政権発足以降、内閣支持率は継続して低下傾向にあったが、小泉進次郎農林水産相によるコメ価格対策が一部で回復の兆しを見せていた。しかし、首相が目標とした価格水準には依然として達しておらず、政策成果が選挙結果に直結するリスクを抱えている。また、首相はこれまで一貫して消費税減税に否定的な姿勢を示してきたが、選挙戦を前に突如として現金給付案を再提示するなど、経済政策の方向性において迷走が見られる。この現金給付案は有権者からの幅広い支持を得られておらず、与党内や連立を組む公明党にも不安を与えているだけでなく、野党各党からは「選挙前の場当たり的なバラマキ策」として格好の攻撃材料となっている。

[参院選終盤戦:石破自民に立ちはだかる課題と注目激戦区の情勢参院選終盤、自民党の選挙活動風景]

7月の参院選の結果が石破政権の先行きを大きく左右することは明らかである。そうした中、首相は7月8日の安倍元首相の命日には事件現場となった奈良で献花を行い、「外国人対応」に言及し始めるなど、保守層の支持獲得に向けた動きも見せている。しかし、これらの戦術には一貫性に欠ける印象がぬぐえない。ジャーナリストの岩田明子氏は、一連の選挙戦を通して「自民選対の劣化を強く感じる」と指摘している。党の選挙対策組織が効果的な戦略を打ち出せていない現状が浮き彫りになっている。

終盤戦に入り、参院での自公両党による過半数割れの可能性も濃厚と囁かれる中、特に注目される激戦区をいくつか挙げることができる。いずれも改選議席が1の「1人区」であり、議席の行方が全体に与える影響は大きい。

まず、”令和のコメ騒動”の要衝地ともいえる宮崎県選挙区が挙げられる。ここは伝統的に保守が強い地盤だが、前農林水産相である江藤拓氏の「コメは買ったことがない」という失言が響き、自民党候補が立憲民主党の新人に猛烈な追い上げを許している。立憲民主党の野田佳彦代表が宮崎の水田を背に公示後の第一声を上げるなど、野党側はここを起点に保守地盤の切り崩しを図っている。

次に注目されるのは鹿児島県選挙区だ。自民党の森山裕幹事長のお膝元でありながら、参院議長も務めた自民党の重鎮、尾辻秀久氏の娘である尾辻朋美氏が立憲民主党の推薦を受けて出馬している。さらに共産党の支持も受ける尾辻氏が、自民党現職の園田修光氏をリードしている状況であり、このままの結果となれば森山氏の求心力低下は避けられない見通しだ。

さらに、同じく保守の牙城とされる富山県選挙区でも緊迫した状況が続いている。ここでは自民党現職の堂故茂氏と、国民民主党新人の庭田幸恵氏が大接戦を繰り広げている。庭田氏は立憲民主党の県連からも支持を受けており、国民民主党と立憲民主党が連携した「野党共闘」の力が試される選挙区となっている。

この他にも、二階俊博元幹事長のお膝元である和歌山県や、旧民主党系が強い東北地方で自民党が議席維持を目指す福島県なども注目されている。これらの激戦区の情勢を見ても、全体を通して自民党の選挙対策に機能不全が見られ、「選対の劣化」という指摘が現実味を帯びていることを強く感じる。

総じて、今回の参院選は石破政権にとって極めて重要な試金石となる。首相の低すぎる勝敗ライン設定、政策の迷走、そして各地の激戦区で苦戦を強いられている現状は、自民党の選挙戦略における課題を浮き彫りにしている。これらの課題を克服し、目標とする過半数議席を確保できるのか、選挙結果が政権の今後を大きく左右することになるだろう。

[出典] https://news.yahoo.co.jp/articles/aca30cd1d20c59488e69a3944fb4930174b74e18