北海道南西部の倶知安町は、富士山に似た「蝦夷富士」とも称される羊蹄山(標高1898メートル)のふもとの町だ。美しい景観に加え、陸上自衛隊駐屯地としても知られる。
「その羊蹄山の麓で6月初旬、林地開発許可を得ないまま森林法に違反する3.9ヘクタールの伐採が進んでいたことが発覚。現場では建築物も造られ始めていました。連日、地元テレビ局のニュースを賑わせる騒動になっています。北海道は事業者に対して、工事の停止を勧告しました」(地元行政関係者)
このエリアで構想されていた「中国村」の計画書を独占入手
違法な伐採の目的は何だったのか。実は伐採地をふくむ山麓の広大なエリアで、中国系業者が主導する「中国村」が構想されていたことが「 週刊文春 」の取材で分かった。計画書を独占入手した。
計画書とは、業者らが作成したという16枚のスライドだ。表紙に〈倶知安町 NEW LIFE PROJECT〉と銘打ち、2035年までに一帯を〈ビレッジ化〉することで、〈ライフスタイルそのものをトータルプロデュースする〉などと謳う。また〈ビレッジ〉内にはホテルやコンドミニアムをはじめ、広場、スーパー、マルシェなどを造ると記載されている。
事情を知る町政関係者が語る。
「この開発は、中国人向けのものです。伐採もその一部でしょう。すでに中国語のウェブサイトでも別荘販売などを宣伝してきました。開発を主導するのは札幌市内の不動産会社で、この会社の社長は、中国出身の男性です」
東京ドーム13個分の土地を次々と取得し、中国企業などに転売
また、別の町政関係者が明かす。
「実はこの会社は、一帯の土地の“買い占め”を静かに進めています」
「週刊文春」が伐採地とその付近の土地の所有者を調べると、2019〜2025年の間、この会社が少なくとも約60ヘクタールもの土地を次々と取得していたことが判明した。広さは東京ドーム13個分にあたる。さらに、その一部はすでに、中国に住所のある人物や、中国企業などに転売されていた。
着々と準備されてきた「中国村」。その計画書には、ほかにも注目すべき記述があった。それは「水」を巡るものだ——。
7月9日(水)12時配信の「 週刊文春 電子版 」および10日(木)発売の「週刊文春」では、倶知安町の現状を記者がルポ。7つもの法律違反を犯した森林伐採の実態、「中国村」を主導する社長の素性、そして「中国村」計画書の詳細な中身について報じている。
「週刊文春」編集部/週刊文春 2025年7月17日号