「本当に悔しい」。埼玉県熊谷市で6人を殺害したとして強盗殺人などの罪に問われたナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告(34)に対する5日の東京高裁判決。大熊一之裁判長が無期懲役の判決を言い渡した瞬間、遺族らは驚きの声を上げ、声を殺して泣く人もいた。遺族は閉廷後、直ちに検察側に上告するよう求めた。
妻と娘2人を失った男性(46)は「事件の日からやっとの思いで毎日を生きてきた」と振り返り、死刑を言い渡した1審さいたま地裁の裁判員裁判判決は「家族が戻らなくとも、心に一区切りを付けてくれるもの」だったという。
男性は判決を受け「言葉が見つからない。ばかばかしいとさえ思える」と視線を落とし、「大切な家族を亡くした者の気持ちをこれっぽちも理解しない、心の通っていない判決だ」と怒りをにじませた。責任能力の判断についても「こんな法律で大丈夫か。同じ症状の人が事件を起こせば、黒が白になってしまう」と疑問を呈した。
被害者代理人を務める高橋正人弁護士は「妄想だけでは説明しきれない犯行」と指摘。1、2審とも、責任能力については弁護側が請求した医師の証言しか取り調べられなかったとして「検察側の証人も尋問すべきだった。非常に不公平だ」と批判した。