米国の政治学者ニコラス・エバースタットは、米誌「フォーリン・アフェアーズ」で人類が「人口減少の時代」に突入したと指摘。この世界的な潮流は、かつて大家族で知られた中東地域をも巻き込み、急速な少子化が進行しています。これは、社会を根本から変える「静かなる革命」として注目されています。
中東を覆う「静かなる革命」の現実
人口減少は欧米や東アジアに留まらず、今後25年間で世界の76%の国で合計特殊出生率が人口置換水準を下回る見込みです。特に中東では、従来のイメージに反し急速な少子化が進展。ドイツメディア「ドイチェ・ヴェレ」は、抗議デモなどを経ずに社会を根底から変えうるこの状況を「静かなる革命」と表現しています。
統計が示す出生率の劇的変化
中東の合計特殊出生率は、1960年代以降半減し、かつての平均7人から2010年代初頭には3人まで減少。世界銀行の統計では、2023年までにアラブ連盟加盟22カ国のうち5カ国が、人口維持に必要な2.1の人口置換水準を下回りました。
アブダビの街頭で遊ぶ子供たち。中東地域における合計特殊出生率の低下が社会構造に与える影響の一例。
2023年時点で中東で最も高い合計特殊出生率4.6人のイエメンでも、1980年代には9人でした。この急減は、イエメンの出生率も速やかに他国水準に近づく可能性を示唆し、地域全体の人口動態の大きな変革を裏付けています。
結論
中東で加速する少子化は、従来の大家族イメージを過去のものとし、社会、経済、文化に広範な影響を及ぼす「静かなる革命」として進行中。この劇的な人口動態の変化は、中東地域に新たな課題と可能性を提示しています。
出典:COURRiER Japon(クーリエ・ジャポン)