韓国・忠清南道瑞山(ソサン)では、202X年7月16日から17日未明にかけて、1時間に114.9ミリという歴史的な豪雨に見舞われました。降り始めから17日午前11時までの総降水量は518.9ミリに達し、これは年間降水量の約40%に相当する規模で、「100年に一度」とも称される記録的な集中豪雨となりました。この異常気象は、地域社会に甚大な被害をもたらし、その気象学的要因と将来的な傾向について、専門家の間で活発な議論が交わされています。
瑞山を襲った記録的豪雨とその気象学的背景
今回の瑞山の豪雨について、韓国気象当局は17日の定例ブリーフィングでその詳細な原因を分析しました。当局によると、南から流れ込む暖かく湿った空気と、北からの冷たく乾燥した空気の境界で発達した中規模の低気圧が、忠清圏上空に長時間停滞したことが主な要因です。特に、この二つの異なる性質の空気の境界へ、高度約1.5キロ地点で吹く大気の流れ「下層ジェット」から多量の水蒸気が供給され続けたことで、降水量が増大しました。
韓国気象当局の予報分析官は、二つの空気が同程度の勢力を保ちながら衝突することで、地表面の加熱によって生じる上昇気流から発達する「対流雲」が特定の地域に留まり続ける現象が発生すると説明しています。このような局地的な現象は、現状の科学技術では予測が非常に困難であると指摘されており、今後の気象予測における課題として浮上しています。
集中豪雨による土砂崩れで土砂が流入した忠清南道礼山郡の住宅地
集中豪雨の頻度と強度の変化:気候変動との関連は?
近年、集中豪雨がより激しくなり、発生回数も増加しているとの指摘が聞かれます。実際に、ソウルにおける日降水量80ミリ以上の豪雨日数の統計を見ると、1980年代には皆無だったこのような日が、1990年代、2000年代、2010年代にはそれぞれ3度記録されています。2020年代に入ってからも、2024年までに既に1度観測されています。
しかし、韓国気象当局の別の予報分析官は、「集中豪雨の激しさや回数が増加していると断定するには、さらなるデータと分析が必要である」と慎重な姿勢を示しています。その一方で、「雨の激しさが強まる傾向にあるという分析は存在する」とも付け加え、気候変動が降水パターンに影響を与えている可能性を示唆しています。この点については、学術界でも活発な研究が進められています。
海面水温上昇と大気中の水蒸気量増加がもたらす影響
集中豪雨の強度と頻度が増加しているとすれば、その背景には何があるのでしょうか。気候変動との関連が指摘される中、公州大学の大気科学の専門家は、「現段階で気候変動の影響だと断言することは難しいが、長期的な視点での判断が必要だ」と述べています。
それでも、朝鮮半島周辺の海面水温上昇が集中豪雨の激化や頻度増加に寄与している可能性は、複数の専門家によって分析されています。公州大学の教授は、過去60年間で朝鮮半島周辺の海面水温が急速に上昇しており、海面水温の上昇が下層大気を暖め、上層の冷たい空気との間で活発な対流を引き起こし、これが強い集中豪雨につながる可能性を高めると説明しています。ソウル大学の地球環境科学の教授も同様に、海面水温の上昇が地表と下層大気の加熱を促進し、その結果、暖かい下層大気と冷たい上層大気の間の変動が激しくなることで豪雨が発生しうるとの見解を示しています。
韓国気象当局の統計データによると、朝鮮半島周辺の海面水温は、1968年から2017年の50年間で、日本海側(東海)で0.70~2.09度、黄海側(西海)で0.25~2.45度、東シナ海側(南海)で-0.04~1.86度上昇しています。これは、同期間における地球全体の海面水温平均上昇値0.56度と比較しても、朝鮮半島周辺海域での顕著な温暖化を示しています。
また、大気中の水蒸気量が増加していることも、集中豪雨のもう一つの原因として推定されています。公州大学の教授は、朝鮮半島は南シナ海や西太平洋から継続的に水分が供給されており、その水分量が徐々に増えていることが、より頻繁で多量の雨が降る背景にあると指摘します。しかし、ソウル大学の教授は、水蒸気の増加が降雨の可能性を高める条件であるとしながらも、水蒸気が雨となり、特に局地的に集中するメカニズムについては、依然として未解明な点が多いと述べており、今後の研究が待たれます。
歴史的豪雨により広範囲で浸水した忠清南道礼山郡の市街地
結論
韓国・瑞山で発生した「100年に一度」の集中豪雨は、特定の気象条件が複合的に作用した結果であり、その局地的な現象の予測の困難性が浮き彫りになりました。一方で、朝鮮半島周辺の海面水温の上昇や大気中の水蒸気量の増加など、気候変動との関連が指摘される要因も確認されています。気象当局や専門家は、集中豪雨の増加傾向やその背景にあるメカニズムについて、さらなる科学的解明と長期的な観測の重要性を強調しており、地球規模での気候変動への適応と緩和策が、今後ますます重要となるでしょう。
参考資料
- 韓国気象当局発表資料
- 公州大学 大気科学研究
- ソウル大学 地球環境科学研究
- ハンギョレ新聞報道 (https://news.yahoo.co.jp/articles/1d8afea647215f38d8328320b3478b8a53991d03)