参院選・さや氏「核武装は最も安上がり」発言に波紋:被爆地広島の訴え

7月20日投開票の参議院選挙東京選挙区に出馬している参政党のさや氏(43)が、核保有に関する持論を展開し、大きな波紋を広げています。特に「核武装が最も安上がりであり、最も安全を強化する策の1つ」と発言したことが物議を醸しており、被爆地広島からは強い疑問と反論の声が上がっています。日本の安全保障と核兵器を巡る議論に新たな視点を投げかけるこの発言は、国民の平和への意識を改めて問い直すきっかけとなっています。

参院選東京選挙区出馬中の参政党さや氏。核保有に関する発言が物議を醸している。参院選東京選挙区出馬中の参政党さや氏。核保有に関する発言が物議を醸している。

さや氏の「核武装安上がり論」の詳細

この発言は、日本テレビの報道局が運営するYouTubeチャンネル『日テレNEWS』が7月3日にライブ配信した「投票誰にする会議~参院選2025東京選挙区~」でのことです。東京選挙区から出馬する候補者3名が安全保障の争点について議論する中で、司会者から「核の保有」と「日米安保」に対する党の見解を問われました。

さや氏は、「『100年続く同盟はない』と言われていますから、日米安保、今の段階ではやはり米国に頼るところも大きいとは思うんです」と前置きしつつ、「言い方がすごく汚い言葉になっちゃうかもしれないんですけども、“みかじめ料”を払いつつ、自分たちも備えるっていうそういう当たり前のことですね」と述べ、自立した防衛の必要性に言及しました。

さらに、彼女は「自分たちの防衛力、自国のためにどれだけ活用できる兵器があるのかというのを考えた時に、あの北朝鮮ですらも核兵器を保有するとですね、一応国際社会の中でトランプ大統領と話ができるくらいまでには行くわけですよね。交渉ができるという」と述べ、核兵器を保有することで国際交渉力が向上するというメリットを主張しました。その上で、「そういう状況までいくということを考えると、核武装が最も安上がりであり、最も安全を強化する策の1つだとは考えています」と持論を展開しました。

ただし、さや氏はこの発言が「私個人的に考えていること」であると強調しました。参政党全体としては、「おそらく『核の議論を封じてはならない』と、今はまだその段階じゃないかなと思うけど、核の保有も含めて防衛力をどう構築していくか考えましょうということだと思います」と締めくくっています。

参政党の公式見解と発言の背景

参政党の公式サイトで公表されている「参政党の政策2025」では、核保有について明確な記載があります。そこには、「核保有国に囲まれた日本を守るため、厳しい国際社会の現実を踏まえ、核廃絶を長期的な目標としつつ、今の日本を守るために、核保有国に核を使わせない抑止力を持つ」と記されており、核兵器の保有を完全に否定するものではないものの、その目的を「抑止力」としています。

世界で唯一の被爆国である日本において、政治家が核兵器に関するこのような発言をすることは、国内外で大きな注目を集めます。特に、その言葉の選択や文脈は、国民の安全保障に対する意識や、被爆の歴史に対する向き合い方に影響を与える可能性があります。

被爆地広島からの強い疑問と反論

さや氏の「核武装が最も安上がり」という発言に対しては、SNSを中心に疑問や批判の声が多数寄せられました。そして、この発言に対する被爆地からの見解を求め、広島県原爆被害者団体協議会(広島県被団協)の理事長である佐久間邦彦氏(80)が取材に応じました。

佐久間氏は、「なぜ核武装したら安全だと思うのか聞きたい」と強く訴えます。彼は、「“核武装したら”という意見はありますが、核武装によって平和の問題が捉えられるかといえば、私は“あり得ない”と思います。お金もかかるし、効果もわかりません。脅威を感じるのであれば、まずは相手と話し合うことが大前提だと私は思います」と述べ、核武装が平和をもたらすという考えに疑問を呈しました。

さらに、「そもそも、なぜ核武装が『安上がり』なのかもわかりませんが、お互いに核武装すれば結局はどんどん軍備拡大の方向に進むのではないでしょうか。核を持ったら“安く上がる”ということはないと思いますし、そもそも“安く上がる”という言葉自体がおかしいと思います」と、「安上がり」という表現に対する強い違和感を示しました。

日本、他国関係なく、誰に対しても核は使ってはいけないと訴える佐久間氏は、唯一の被爆国として「右とか左ではなく」国際的なルールを守って平和を訴えていくことが大切だと強調します。「日本は太平洋戦争から、“軍隊を持たない”、“戦争をしない”ということを世界に発信してきました。唯一の被爆国として原爆の悲惨さを伝えるとともに、核兵器廃絶を訴えてきました。戦争も核兵器もない世界を、やっぱりみんなで作っていかなきゃということで、被曝体験を伝えてきました」と、日本の歴史的役割と使命について語りました。

彼は、「なぜ核武装したら安全だと思うのか聞きたいです。広島がどんな目にあったかと言いたくなります。体験した人たち、亡くなってきた人たちが”どう思うか”と言いたいです。核を使ったらどうなるか。核を使えば、自分たちも相手もどういう目に遭うのか、知ってほしいです」と、被爆者の声と広島の悲劇を忘れないことの重要性を切々と訴えました。

結論

参院選東京選挙区候補者であるさや氏の「核武装は最も安上がり」という発言は、日本の安全保障政策と核兵器に対する国民の意識に大きな問いを投げかけました。特に、世界で唯一の被爆国である日本において、平和を希求する声と現実的な抑止力追求の狭間で揺れ動く議論の複雑さを浮き彫りにしています。広島の被爆者が語り継ぐ核兵器の悲惨さと平和への切なる願いは、今後も日本の安全保障議論において重い意味を持ち続けるでしょう。さや氏がこれらの声にどう向き合うのか、今後の動向が注目されます。

参考文献

  • Yahoo!ニュース. (2025年7月18日). 参院選出馬中さや氏「核武装は最も安上がり」発言に広島県被団協理事長「なぜ核武装したら安全だと思うのか聞きたい」. Retrieved from https://news.yahoo.co.jp/articles/851739ce7928ecef345c80ccbef560d001f002a8
  • 日テレNEWS. (2025年7月3日). 投票誰にする会議~参院選2025東京選挙区~. Retrieved from https://www.youtube.com/watch?v=xxxxxxxxxxx (※動画URLは記事原文から特定できないため、汎用URLを記載)
  • 参政党. (日付不明). 参政党の政策2025. Retrieved from https://www.sanseito.jp/policy2025/ (※URLは参考、実際は公式ウェブサイト上の該当ページ)
  • 広島県原爆被害者団体協議会. (公式ウェブサイト). (※言及された組織名)