ベネズエラ難民の実像:アルゼンチンでの邂逅と国家崩壊の背景

2月13日、ブエノスアイレスの国会議事堂見学ツアーに参加した際、筆者はあるベネズエラ人グループと出会った。彼らの外見は他の南米諸国からの観光客と何ら変わらず、いわゆる「経済難民」に対する固定観念を覆すものだった。破綻国家ベネズエラから来た彼らは、経済的な困窮により故郷を捨ててアルゼンチンへ渡った人々、すなわち経済難民と推測される。異郷で生活の糧を得、落ち着いた暮らしを送るようになった難民の現実がそこにはあった。

アルゼンチンで見かけられた、外見では判断しにくいベネズエラ経済難民。彼らは770万人にも上る国外流出者の一部である。アルゼンチンで見かけられた、外見では判断しにくいベネズエラ経済難民。彼らは770万人にも上る国外流出者の一部である。

独裁政権下での国家破綻:潤沢な石油資源からの転落

ベネズエラの現状は深刻だ。日本外務省のデータによると、2024年の人口は2646万人、1人当たりGDPは3870ドルと報告されているが、失業率などの信頼できる統計は存在しない。国際通貨基金(IMF)のデータでは、2018年の失業率は36%に達し、その後はデータが途絶えている。さらに、累計780万人もの国民がコロンビア、ペルー、チリといった近隣ラテン諸国へ流出しているとされており、これは世界最大規模の難民危機の一つである。

かつては潤沢な石油輸出収入に支えられ、中南米でもトップクラスの豊かな国であったベネズエラは、ウーゴ・チャベス(在任2002年〜2013年)とニコラス・マドゥーロ(2013年〜現在)の二人の独裁者大統領の下、わずか二十数年の間に国家として完全に破綻した。チャベス政権以前の2000年には14%だった失業率が急激に悪化したことからも、その経済的凋落ぶりは明らかだ。

終わりに

ブエノスアイレスでの出会いは、ベネズエラが直面する経済的、人道的な危機が、一般的な「難民」のイメージを超え、多岐にわたる人々の生活に深く影響を与えている現実を浮き彫りにする。独裁政権による国家運営の失敗が、一国を破綻させ、数百万規模の国民を流出させた事実は、国際社会が注視すべき重大な問題である。

参考文献