「いじめは許せない」被害者の本音:社会が求める「美談」のその先

先日、X(旧Twitter)でいじめ被害を受けた男性が加害者からの謝罪を拒絶した投稿が話題となり、「許し」を巡る議論が再燃しています。「謝って自分が楽になりたいだけ」「許してあげるのが優しさ」など、賛否両論が巻き起こる中、いじめ被害者の「許せない」という本音は、現代社会が美談としがちな「許し」の重圧とどのように向き合っているのでしょうか。今回は、過去のいじめ体験を持つ当事者の声から、その複雑な感情を探ります。

「今でも許せない」過去のいじめによる深い傷

会社員のジャスティス古川さん(30)は、学生時代に受けた命の危険を感じるほどのいじめの過去を抱えています。彼は「私の誕生日に、いじめっ子たちが集まってきて、背負い投げをされて顎から着地し、数針縫う怪我を負った。本当に死ぬかと思った」と、その壮絶な経験を語ります。

いじめ被害の経験を語るジャスティス古川さんいじめ被害の経験を語るジャスティス古川さん

この出来事から15年が経過した今でも、古川さんの心境は変わっていません。もし加害者から謝罪されたとしても、「今でも許せないなという気持ち。単純に関わりたくないし、人生に現れてほしくない」と、強い拒絶の意思を示します。「許すこと」が美談とされる現代社会において、「許せない」という感情までをも許容する必要があるのか、という問いを投げかけています。

軽すぎる謝罪と被害者の「許さない」選択

小学校から高校までいじめを受けた経験を持つ30代のシライさんも、いじめ加害者への「許せない」感情を抱える一人です。成人式の後の高校の同窓会で、主犯格の男子から「なんか、あのときごめん」と軽い謝罪を受けた際、シライさんは「もう許せないし、許したくない」と明確に伝えたといいます。

学生時代のいじめを許さないシライさん学生時代のいじめを許さないシライさん

いじめの内容は、教科書や体操着を隠されたり、靴の中に画鋲を入れられたりする典型的なものでした。当時の教師に相談したものの、「大事にしたくないのが見え見えで、『許してあげてよ』みたいな感じだった」と、適切な対応が得られなかったことも、シライさんの心に深い傷を残しました。この経験は、いじめによる自殺のニュースを見るたびに、当時の辛い記憶を呼び起こすといいます。

現在でも、シライさんは加害者の男子に対して許せない感情しかなく、さらに「助けてほしかったときに助けてくれなかった」傍観者のクラスメイトに対しても、「人格無視みたいな感じだったので許せない」と強い不信感を抱いています。しかし、もし加害者から真剣に、心のこもった謝罪があったなら、「多分許してたかもしれない」とも明かしており、謝罪の「質」が被害者の感情に大きな影響を与えることが示唆されます。

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