ローソン店内撮影規制、視覚障害者からの懸念と企業側の対応策

近年、大手コンビニエンスストア「ローソン」で頻繁に流れるようになった「店内での写真・動画の撮影はご遠慮ください」というアナウンスが、一部の利用者、特に視覚障害を持つ人々から深刻な懸念の声が上がっています。この問題はソーシャルメディア上で大きな注目を集め、企業側の対応が注目されています。

視覚補助としてスマートフォンを使う人々の声

この問題のきっかけとなったのは、先天性の弱視を持つXユーザーのシュライン氏(@shrine0601)による投稿です。シュライン氏は、ローソンでおにぎりの種類を確認する際など、商品の詳細を見極めるためにスマートフォンのカメラ機能や拡大鏡アプリを使用していると説明しました。この行為は、文字通り「見えにくいものを拡大して見ているだけ」であり、情報を得るための「目の代わり」として不可欠な手段です。

過去には、事前に美術館の学芸員から許可を得ていたにもかかわらず、見た目だけで判断され周囲とトラブルになった経験があるといいます。そのため、ローソンの店内撮影禁止アナウンスが流れることで、再び同様の誤解や不必要な摩擦が生じるのではないかとの不安を吐露しました。「白杖をついた人がカメラを使っていても、それは『撮影』ではなく、見えにくいものを拡大して見ているだけかもしれません」と呼びかけ、社会全体の理解を求めています。

ローソン店内の商品棚に並ぶおにぎり。視覚障害者がスマートフォンで拡大して情報を確認する対象となる商品の一例。ローソン店内の商品棚に並ぶおにぎり。視覚障害者がスマートフォンで拡大して情報を確認する対象となる商品の一例。

ローソン広報部の見解と今後の対応

J-CASTニュースの取材に対し、ローソン広報部は、店内での無断撮影は他のお客様や従業員のプライバシー保護、およびトラブル防止の観点から控えるよう、全国の店舗でアナウンスを行っていると説明しました。これは一般的なルールとして設定されているものです。

一方で、ローソンはこれまでもバリアフリーへの取り組みを進めてきたことを強調しています。聴覚障害を持つお客様向けのレジでの「指差しシート」の導入や、障がいを持つ方へのお買い物のサポート方法を店舗マニュアルに明記し、従業員への周知を徹底するなど、すべてのお客様が不自由なく買い物できる環境作りを目指しているといいます。

今回の視覚障害者からの声を受け、ローソン広報部は「本件については視覚障がいをお持ちの方にご不便にならないよう、アナウンス内容の変更も含め今後対応を検討してまいります」とコメントし、改善に向けた前向きな姿勢を示しました。

社会的な反響と共感の広がり

シュライン氏の投稿は7900件を超える「いいね」を集め、多くのユーザーからの共感を呼びました。弱視や老眼などで視力に課題を抱える人々からは「まさにその通り」「同じような経験がある」といった賛同の声が多数寄せられました。また、一般のユーザーからも「なるほど、スマホを通して見たほうが判別しやすい方もいらっしゃるんだ……」「勉強になる」「伝える事が嫌な人もいるだろうから、こちら側が理解してあげようって思うな」といった、新たな気づきと共感を示すコメントが広がっています。

まとめ

ローソンが店内撮影禁止のアナウンスについて、視覚障害を持つ利用客からの声を受けて内容変更を検討していることは、企業が多様な顧客ニーズに対応しようとする姿勢を示すものです。この一連の議論は、テクノロジーが障がい者の生活をどう支え、そして社会がそれをどう理解し、誰もが安心して利用できるユニバーサルな環境をどう構築していくかという、重要な社会課題を提起しています。企業と利用者の双方向のコミュニケーションを通じて、より包摂的な社会への一歩が期待されます。

参考文献