近年、ボディアートとしてのタトゥーは世界的に人気を集め、米国では何百万もの人々が少なくとも一つのタトゥーを身につけていると推定されています。しかし、その一方で「後悔」の念を抱き、タトゥー除去を検討する人も増加しているのが現状です。最近では、歌手で俳優のマイリー・サイラスさんが自身のボディアートの約8割に後悔を表明し、世間の注目を集めました。なぜ多くの人がタトゥーを消したいと願うのでしょうか。
「鏡を見るのが恥ずかしい」元タトゥーアーティストの除去体験
デトロイト都市圏でタトゥーアーティストとして活動するラナ・ケインさんは、タトゥーについて深く理解している人物です。自身の体には意味のあるものから、単に「クールに見えた」という理由で入れたものまで、様々なタトゥーが刻まれていました。しかし現在、彼女はその一部を除去している最中です。
彼女の胸元にあったタトゥーは、わずか16歳の時に入れたものでした。「イタリア語のようなフレーズでしたが、当時はイタリア語が分かりませんでした」とケインさんは語ります。このタトゥーを見るたび、「鏡を見て恥ずかしくなった。ひとりで部屋にいたのに、恥ずかしかった」と感じていたそうです。タトゥーが消え、「胸元の開いたシャツを着ても恥ずかしくないなんて、魔法のよう」と、その解放感を表現しています。
タトゥーの除去を経験するデトロイトのタトゥーアーティスト、ラナ・ケインさん。胸元のタトゥーを見つめる姿。
統計が示す後悔の現実:25万人以上がタトゥーを消したい理由
ケインさんのようにタトゥー後悔の念を抱く人は決して少なくありません。ピュー・リサーチ・センターの調査によると、米国ではおよそ25万人もの人々が自身のタトゥーについて何らかの後悔を経験していると報告されています。
「大丈夫です。時に人生は変わるものです。新しい章へ進めばいいのです」と語るのは、タトゥー除去専門スタジオ「クロマタトゥースタジオ&レーザータトゥーリムーバル」のオーナー、ジェイミー・ハワード氏です。彼女の元には毎日最大16人もの人々がタトゥー除去を求めて訪れると言います。除去を希望する理由は多岐にわたり、「離婚したので相手の名前を消したい」「イメージを変えたい、アップデートしたい」など、人生の変化や自己表現の変化が主な動機となっています。
レーザー治療と専門医の視点:除去プロセスと留意点
タトゥー除去の主流はレーザー治療です。ハワード氏によると、レーザーはインクの粒子を分解し、体外への排出を促すことでタトゥーを薄くしていきます。しかし、通常は複数回の施術が必要で、多少の痛みを伴うこともあります。
皮膚科医のウェンディ・サドフ氏は、タトゥー除去に関する相談は概して若い世代、特に20代から30代の患者に多いと指摘します。「年齢が上の人は、すでにタトゥーと折り合いを付けているか、他のことにお金を使いたいと考えている傾向があります」とサドフ氏。レーザー治療に加え、小さなタトゥーであれば外科的な切除も選択肢となり得ると説明します。サドフ氏は、タトゥーを入れる前に「万一後悔した場合、どうなるのか、何が必要になるのかを理解しておくこと」の重要性を強調しています。
解決策があるという希望
タトゥーが心の悩みやストレスの種となっているならば、その解決策は存在します。ハワード氏は「人生の妨げになっていたかもしれない重要な問題の解決を手助けできるのは、本当に満足感がある」と語り、タトゥー後悔を抱える人々に対し、一人で悩まずに選択肢があることを知ってほしいと訴えています。タトゥー除去は、単にインクを消すだけでなく、個人の心の平穏を取り戻し、新たな人生の章を始める手助けとなる可能性を秘めているのです。
参考文献:
- Yahoo!ニュース (CNN.co.jp): 「自分の肌を取り戻したい」 タトゥーを消す人々 (https://news.yahoo.co.jp/articles/9cf6f7c69e8eacf53b7f20c15385a5b96b84b2ab)
- Pew Research Center (言及されている調査結果に基づく)